コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

雲のむこう、約束の場所

だいぶ前から見ようと思っていたNHK BS-hi「アニメ映画劇場」の地味な良作3部作のうちの1つ*1。ようやく見ることができた。


自主制作のアニメーションで話題になったという新海誠監督が作った初の長編アニメーション。この作品は一部でカリスマ的に愛されているという話を聞いていたが、見終わってなるほど、と思った。青臭いところもあるし、中盤まではわりとまったり進行でどうなのかな、と思っていたが、中盤からの展開の盛り上がりからラストに向けての疾走感、確かに面白く心地よい。小難しげなSF的設定も、なんとなく納得させられてしまう表現力がある。またコテコテすぎるくらいの青春ドラマも、最後まで見終わればこれはこれでアリなのかな、と思わせる説得力がある。

もうひとつ、この作品で特徴的なのは「景色」だ。序盤、とにかく風景の描写が多い。現代のようで現代ではない世界。新しさと懐かしさの混在する世界。それが風景によって描かれる。水没した田舎風の駅や、空の向こうに見える天まで延びる塔のある風景。それがいかにも自然に描かれている。非常識でありえない、それでいて違和感がない不思議で印象的な景色。

雲のむこう、約束の場所 [DVD]

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以下バレ。


天まで延びる塔、青春、ヴェラシーラ、親友、分断された海峡、夢、ジュヴナイル、津軽、飛行機、恋、ユニオン、世界、約束。


奇しくも「パプリカ」に続き、「夢」を扱うアニメになってしまったが。

正直、見始めたときにはヒロイン沢渡佐由理の動きや声があまりにも甘ったるくてちょっと辛かった。ストーリーとしても、中学生男子二人と女子一人の微妙な夢と恋模様、みたいな感じで、このまま最後までいくのだったらしんどいなあ、と思っていた。

しかし、それでは終らなかった。突如として話は変わる。行方不明になった佐由理。それをきっかけに夢だった飛行機作りを諦めてしまう浩紀と拓也。浩紀はその現実から逃れるように東京の学校へ進学し、拓也は軍関係の機関で研究に没頭する。そこからはガラっと雰囲気が変わり、テンションの高い話になっていく。拓也が佐由理のいた病室へたどり着くシーンや、喧嘩した親友同士が何事もなかったかのように仕事に没頭していくシーンは、コテコテなんだけど良いね。

あの世界は私たちが住むこの世界とは違うけれど、きっと「並行世界」のひとつなんだろうなあ、なんてね。

*1:私が勝手にそう呼んでいるだけ。あとの2つは「アリーテ姫」と「パルムの樹