コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

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見ていて体に力が入った映画は久しぶりだ。疲れていたにもかかわらず集中して見入ってしまった。

スタンフォード監獄実験」を題材にしたドイツ映画。被験者を囚人と看守に分け、2週間のあいだそれぞれの役を演じさせるという心理学実験が行われる。最初は冗談半分でそれぞれの役をこなしていた被験者だが、次第に看守役は囚人達を統制するために攻撃的な態度をとるようになり・・・。


やはり私にはヨーロッパの映画が肌に合うようだ。全体的にトーンが落ち着いていて、演出も無駄にうるさくない。淡々としていながらしっかり魅せてくれる。テーマが重いから、というのもあるが、見せ方の上手さも特筆すべきだろう。

以下、ネタバレ含むので隠し。



ヒロインやら「眼鏡」やらの必要性や、実験中なのに教授が現場にいなかったり、これだけ大規模な実験にスタッフが一人しかついていなかったり、など、ストーリーや設定の点で「もうちょっと」と思うところはところどころあった。それでも手に力が入ったまま抜けない映画だったことは確かだ。音やびっくり映像で怖がらせるのではなく、人の心が壊れていく様で恐怖を煽る。実話を元にしているという触れ込みが、リアリティと没入間を増している。


看守役と囚人役のどちらになりたいか、という問いを見かけた。私なら看守役だな。看守役になって、むしろ看守をコントロールしたい。私にその能があるかないかは別にして、看守側を秩序でもってコントロールしてみたい。囚人をコントロールするより、そっちの方が面白そうだ。


見た後にかなり悪い後味が残るので、そういうのが苦手な人は見ない方がいいかもしれない。しかし衝撃的な良作であるということは間違いない。


もうひとつ付け加えておくと、さすがに映画なので多々脚色はされているようで、実際の実験と映画とは異なっているとのこと。精神的に参ってしまった被験者はいるようだが、死者や受賞者は出ていないようだ。Amazonのレビューの「ナビィの声」氏の書き込みをどうぞ。

追記

レビュー読んでて思い出したのだが、確かにあの箱の中のドライバーはちょっと「ご都合主義」すぎるよなあ。

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