コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

日本家屋の言葉3 - 暖

家屋ではないが、日本的なモノの言葉ということで。まだ寒いうちに暖に関するものを書いてしまおうと思う。なんだか思い出話のようになってしまったが。



炬燵(こたつ)*
言わずと知れた炬燵。しかし改めて考えてみると、名前も字もけっこう奇妙。辞書を見ると「『火榻』の唐音から」と書いてある。モノ自体も唐から来たものということになるのだろうか。しかし中国って板まで、床に座る習慣はあまりなさそうなんだけど、炬燵なんてあるんだろうか。もっと形の違う、「行火(あんか)」のようなものだったのかもしれない。

今ではほとんどが電気炬燵だが、祖母の家ではずっと「豆炭(まめたん)*」の炬燵を使っていた。だから炬燵の中はいつも真っ暗。火をつけるのにも手間がかかった*1。でも電気のように「熱すぎる」なんてことはなかったような気がする。まあ熱かったとしても邯鄲には火加減できないのだが。

豆炭炬燵、実はちょっと危ない。炬燵の中で密閉した状態で燃焼させるので、炬燵の中に一酸化炭素が充満するのだ。妹が幼い頃、炬燵に潜って寝ていて一酸化炭素中毒になり、救急車で運ばれたことがある。


行火(あんか)*
元は炭などを入れて手足を温めるもの。炬燵の暖かい部分も一種の行火。今ではほとんど電気のものになってしまったようだが、というか、行火自体ほとんど使わなくなってしまっただろうか。私が子供の頃は、寝るときに電気行火を足元にあてがって眠っていた。それがそのうち電気毛布になった。今では何も使わないで寝ているけど。


湯湯婆(ゆたんぽ)*
中にお湯を入れて暖を取る容器。これも子供の頃には家にあったが、いまではほとんど見かけなくなった。少なくともお湯を入れることはない。風邪のときなどに湯たんぽに氷水入れて水枕代わりなどにはしていたが。

この字は調べて知ったのだが、なかなか面白い。「たんぽ」は唐音のようだが。なんだか「千と千尋の神隠し」の「湯婆婆」みたいで。


火鉢(ひばち)
これは字面も読みも判りやすい言葉。これも祖母の家にあった。私は見ていないのだが、今年も出していたようだ。

火鉢といえば、祖母の家の近所の雑貨屋に置いてあった火鉢が印象的だった。縁の厚い大きな○火鉢で、お菓子を買ってもっていくと、その火鉢の上でお爺さんがそろばんをパチパチとはじいていたような記憶がある。その店での買い物は、祖母への「つけ」として帳面に記されていたようだ。今はもうその店はない。


七輪(しちりん)*
元々は「七厘」と書くらしい。七厘で炭が買えるほど効率の良い「焜炉(こんろ)」というところからの命名のようだ。もちろん見たこと、使ったことはあるが、これはあまり身近にはなかった。最近では練炭自殺の道具として不名誉な紹介のされ方をすることが多い。魚などを焼けば、遠赤外線でふっくら美味しく焼け、しかも脂を下に落としてくれる優れものなのに。

*1:私は豆炭の火付けをしたことはないが。