ようやくS.A.S 2nd GIGを見終えた。1話を見はじめてから1年くらい経ったんじゃあるまいか。もっと経ってるかも。
単純に、やはり面白かった。動きもストーリーも語りも確実に一定以上のクオリティ。他のアニメに比べれば断然良い出来。
ただ今回の「個別の十一人」は、やはり前回の「笑い男」を越えられはしなかったように思う。風呂敷を大きく広げてしまったがために、物語の焦点がぼやけてしまったような印象。後半の草薙素子の不甲斐なさや9課のダメっぷりもその一因だろうか。いや、それを言うなら前作でも9課は後手後手に回ってダメダメだったか。
以下、けっこうネタバレあり。
要因はやはり「笑い男」と「クゼ」の差だろうか。クゼもいいキャラではあったが、いわゆるカリスマ過ぎたのではないかと。彼が持つ革命の意識は攻殻独特のものだったが、彼の行動自体はいわゆるカリスマテロリストと同じ。特に印象的なものではなかった。一方で笑い男は、あくまでも「インディビデュアリスト」を通し、そのやり方、および能力が他の追随を許さないほど秀で、前例がないほどに個性的だった。一方でクゼも特別な力を持ち、300万人の意識に応答しているとんでもない人物だというのは言葉では語られても実感ではあまり感じられなかった。そこの差、かも。
もう一人の敵役、ゴウダ。キャラとしては実においしい人物だった。しかしこれもやはり最後は尻すぼみな感じ。彼もけっきょくは己のプロデュースが度々失敗している。「それでもなお目的を果たしているのだから、それはそれで天才と言えるのではないか」と自ら言っていたが、そんな結果オーライなのは天才とは言わん。彼の言う最後のプロデュースも・・・そんなに劇的なものでもなかったし。
それとラスト。ちょっと人形遣いの融合を思わせる素子とクゼの会話。うーん、なんだか素子らしくない。是でも否でもはっきりと答えを出すのが素子らしさだと思うのだけれど。たとえ迷っていても、答えを出すことで己の道を決断する、みたいな。そこを迷っていてはリーダーとしても主人公としてもちょっとね。最後の最後だからこそそこをはっきりと見せて欲しかった。
それにしても、前回に引き続き、タチコマたちが大活躍。9課が、というより、タチコマたちが世界の運命を変えてしまったと言っても過言ではない。素子やバトーが抜けていてもこの惨劇を回避することはできたかもしれないが、タチコマがいなかったら不可能だった。全編通して、彼らこそがゴーストというブラックボックスのキーになる存在でもあったし、おいしい役どころだったよなあ。AIのバックアップはないのか、バックアップは。
エピローグは漫画版の一番最初のシーンに繋がっている。フチコマも登場し、「24時間の桜の監視は終了」って台詞も懐かしい。でもこういうエンディングってことは、もう続編はないってことなのかな。残念。
と、苦言ばかり呈してしまったが、いや面白かったですよ。原作に捕らわれず、新しい攻殻の世界を築いた作品だと思います。さすがProduction IGです。なのに「BLOOD+」は・・・。いや、やめとこう・・・。