コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

自由意志は存在するか

かなーり古い人力検索での質問だが、ブクマで上がってきたので捕捉。

あなたは、人には自由意志があると思いますか?
また、自由意志が存在するとはどういうことで、存在しないとはどういうことだと考えますか?
(意識などの)精神の働きは(完全に)物質と結びついていると考えますか?

回答を見てみると、「自由意志がある」と答えている人の方が多い。「人は自由意志があるから存在する」とか「自由意志がないと寂しいから」といった理由が多いようだ。観念的な設問だから、是も非も観念的に答えるしかないのだけれど。


認知科学は知らないが、私はの勝手な解釈をば。

何度か似たようなことを書いたことがあるが、私は「自由意志などというものはない」という立場を取る。ちょっとズルい言い方をすれば「個人的体験としての自由意志と呼ばれるものはあるが、現象として見た場合には自由意志などというものはない」ということ。つまり人は自分で選ぶ。選ぶと思っている。自分で考え、答えを出していると認識する。これは確かだ。しかしその答えは、あるいは自分の考えというのは全て、環境や状況、記憶、経験などによって規定されるものであり、人が選ぶ選択肢は既に常に一意に決定付けられている。人が悩みに悩んで出した答えも、コインを投げて決めるときも、その結果はそれ以前と現在の状況から決まるもので、そこに偶然や自由意志、あるいは「別の結果」というものは存在しないのである。

もっとミクロ的に言えば、ニューロンの発火のタイミングから電子の動き(カオス的であるとしても、そこに規律がないわけではない)まで、全てが「あらかじめ定められた」こと。それによって活動する人間の脳や意識もまたブレや揺れ、自由といったものはない。

こんなことを言うと「考えるということは無駄なのか」という反論も出そうだが、そうではない。そこで「考える」こと、あるいは「考えて答えを出すこと」もまた定められたこと。同様に「考えずに答えを出すこと」もまた定められたこと。ただその行動やその結果出される答えは、既に決まっているということ。それを人が知る術はないのだけれど。


うーんうまく説明できないけど、私はそんなふうに思っております。これに関してはマーク・トウェインの「人間とは何か」が面白く書いてると思う。

人間とは何か (岩波文庫)

人間とは何か (岩波文庫)


ちなみに回答の中に一人、比較的私の考えと近い人がいました。

思考が自由な選択はなされないということについては持っている情報によって規定されているのだからなされないという他はありません。情報をどう処理するかはこれまた持っている知識と経験つまり情報からです。遺伝子もまた情報というより他ないと思います。最終的にAとBを決断しなければならない時全ての情報を総合して判断しますがどちらでも自由に選択も可能です。ただそれをもって自由意志があるとは思えません

そうであっても牢獄に閉じ込められた意志とは思いません。自分の知識と経験と性向は誰にも無いもの、つまりユニークなものです。しかしそのユニークさは知識と経験と性向つまり既に情報によって規定されているのです。この場合の意志を自由なものと解釈することも可能ですがそれは各自の判断に任せるしかありません。

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