コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

ヴィドック

ヴィドック ― 2枚組 DTSプレミアム エディション [DVD]

ヴィドック ― 2枚組 DTSプレミアム エディション [DVD]

取り溜め消化中。奇しくも続けてゴシックホラーとなってしまった。いや、「奇しくも」でもないか。相方が見そうにないものを選んでいくと必然的にホラーっぽいものを選ぶことになってしまう。

見るまでは知らなかったのだが、これはフランス映画。「ヴィドック」とは実在の人物だそうで、逮捕されたり脱獄されたり、国の諜報員となったりして最終的に世界初の探偵となった当地フランスでの人気者らしい。

この映画をひとことで言うなら「黄昏色の映画」。パッケージにもあるような暗いオレンジ。とにかく陰影が強くついた黄昏色、黄金色の場面が多い。最初は目が慣れず、画面を読み取りにくくて困ったが、その色合いとコントラストが現実であるにもかかわらず幻想的な映像を作り出していて面白い。

ストーリーは、探偵ヴィドックと鏡の仮面をかぶった怪人との対決。いきなり冴えない感じのオッサンと怪人のガチンコドツキアイからはじまるのでビビった。その冴えない感じのおっさんがヴィドックだった。

物語はヴィドックの視点ではなく、彼の伝記を書く青年がヴィドックの足跡を辿っていくことで進む。時間軸が行ったり来たりするので、人の顔の見分けがちゃんとついていないと困惑する。比較的特長的な顔や仕草のキャラが多いから大丈夫だとは思うけど。

以下ネタバレあり。


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この映画の最も特筆すべき点は、やはり「映像美」ということになろうか。色や形が微妙に歪んだ絵。映像というよりは動く絵画のような、遠近感のズレや色の違和感。屋内は暗く、昏く、陰影を強調し、屋外は不穏な色合いの空が世界を押しつぶすような奇妙な圧迫感を演出している。さらに「怪人」のデザインの美、小道具や建物などの微妙な狂気。ハリウッド映画にはないヨーロッパ独特の臭いに満ち溢れている。

ただ、絵面だけで言えば「スリーピー・ホロウ」の方が好み。「ヴィドック」の絵はちょっとくどい。ヴィドック単品で見ればじゅうぶんな出来なのだが、スリーピー・ホロウの穏やかで静かな絵を見てしまった後なのでどうしても比較してしまう。

ちなみに、ヴィドックにもところどころグロいシーンが入る。怖いというより、グロい。特に血を絞り取られる少女の図はエグい。サイレントヒルを思い出した。


物語はミステリーというより、ファンタジー。最初はリアル志向でいくのかな、と思ったがなんのなんの。コテコテだった。

ストーリーは、しっかり見てないとちょっとついていけないかもしれない。複雑というよりは、展開が速くて見逃すとわからなくなる感じ。

しかしあの最後のどんでん返しはすげー。タイミング、流れが絶妙。「なにー!」って叫んで思わず腰を上げちゃったよ。考えれば予想することのできる展開だとは思うのだが、全然考えてなかったので。でもそのぶんびっくりして楽しめた。


キャラクターについて。いきなり主人公がいなくなるというのは意表を突き過ぎ。ヒーローであるヴィドックの出番があまりなくて、ずっと伝記作家の青年を追っているという点では多少イリーガルな感じがする。ルパンの出て来ないルパン三世のような。長いシリーズ物の中にそういう逸話がある、というのならわかるが。なんて思っていたが、それが最後の大きなどんでん返しに繋がる。

ヴィドックは「こんなおっさん主人公で大丈夫なのかよ」と思っていたが、見終わる頃には「すげーおっさん」という評価に変わっていた。何がすごいって、ドツキアイ。派手ではないが、あんなおっさんが縦横無尽に立ち回るんだからびっくり。

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一つ惜しむらくは、映像美を追求したためかどうか、画面が見づらいところがあった。特にヴィドックと怪人のバトルシーン。色調が単調で陰影が強く、人の動きが速い上に、カメラがひっきりなしに動くので、どういうアクションをしているのか分かり辛かった。せっかくのおっさんvs怪人のドツキアイバトルなんだからもっとしっかりと堪能したかった。

いつかもう一度見たい △(部分的に)
劇場で見たい
最後まで集中して見れた  △(昨日は見る前から眠かったので、途中何度か睡魔と闘った)
他の人にも薦めたい △(ちょっとグロい。ゴシック好きならお薦め)
印象的なモノがあった ○(鏡仮面の造形はずっと忘れないだろうなあ)
マニアック △(フランス映画だし)
追記

他の方の感想にあったのだが「ジョジョ的」というのは言い得て妙。特に最後の怪人の正体が判るシーン。あそこ、映画ではもうちょっと溜めて演出しても良かったかも。

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