コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

Adieu

今回は日本語ではなく仏語。「Adieu(アデュー)*」というのは言うまでもなく別れの挨拶。よく耳にするので普通の別れの言葉かと思いきや、長期の別れや最期の別れの際に使われる言葉らしい。

その意味については、2つの説があるようだ。そもそも「Dieu」というのは神という意味で、その点ではどちらの説も共通している。1つは「神の元で会いましょう」という意味で、今生の別れを意味するというもの。もう1つは「あなたが神とともにありますように」という意味で、相手の平穏を祈る意味というもの。この2つ、似ているようでかなりニュアンスが異なってくる。


ヨーロッパ各言語には同様の成り立ちの、別れの挨拶がある。スペイン語の「Adios(アディオス)*」、イタリア語の「Addio」、ポルトガル語の「Adeus」などがそれだ。

英語にはその系統の言葉がないが、「Good-bye(グッドバイ)*」がそれに近いという話を見つけた。この「Good」は本来「God」で、「Good-bye」は「God be with ye」から来ているというのだ。真偽の程は定かではないが、なるほど面白い話ではある。


それに対応する日本語はというと、すぐには思い浮かばない。しかし「Adieu」関連の記事を探していて面白い話を見つけた。

「さようなら」という言葉。一般的な別れの挨拶だが、子供の頃以来使う機会がほとんどない、ということが書かれていた。確かに思い返してみると、最近使った覚えがない。目上の人には「失礼します」「お疲れ様でした」などと言うし、友人などには「バイバイ」「じゃあね」「またね」などと砕けた言い方をする。あらたまって「さようなら」と言うことは滅多にない。日常的な状況で使うとなるとやはり違和感を感じる。むしろ会話で丁寧に「さようなら」などと言おうものなら、「別れたい意思」を示しているようにさえ感じられはしまいか。

当たり前と思っている言葉が実際にはほとんど使われることなく、それどころかネガティブなニュアンスさえ持ってしまっている。こうやって言葉は変化していくものなのだろうか。

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