コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

続・rayline-guide

交響詩篇エウレカセブン rayline-guide」を読み終えたので書き足し。

全体的にエウレカセブンの内容について語るというよりは、それを作った人々にスポットライトを当てた本だったように思う。インタビューは攻殻機動隊 Stand Alone Complexの監督である神山健治や、安彦良和、秋本康たちと縁のあるスタッフとの対談。設定資料集はただ資料を載せるだけでなく、それらを作ったスタッフの名前を挙げてその経歴や特徴を供に記している。

物語の内容については、前回も述べた通り、特にネタバレなどはなし。放映されたものまとめや物事の細やかなディテールなどは詳しく記述されているが、今後の物語の流れに大きく関わってくるようなネタバレはほとんどはなかった。唯一、声優のインタビュー記事で、エウレカアネモネの人が、「たぶんそうだろう」と皆が思いつつも決定的には明かされていないある事実について明言してしまっているが、そのくらいだろう。ネタバレは読みたくないけど情報は欲しい、という私のようなひねくれ者にとっては非常にあり難いスタンスの本だった。

この本は第1と第2クール、第1話から第26話までのまとめということになっているが、第25話、第26話についての言及はほとんどない。恐らくこの本を作っているときにはまだこの回が出来ていなかったのだろう。特に第26話は、このアニメ中最も盛り上がり、このアニメを「面白い」と言わしめた回だったので、発売時期を遅らせてでも語って欲しかった。残念。

エウレカセブンにどっぷりの人手なくても、少しでもエウレカセブンに興味のある人にはお奨めの本だと思う。例えば各話の大まかな解説や用語集などもあるので、途中から見始めて最初の方の話を見ていない、などという人にもお奨め。


以下、ネタバレ込みの話で。

印象的だったのは安彦良和吉田健一の対談インタビュー。安彦の「察するに、演出とあなたの間に軋轢があるんじゃないの?」って、ぶっちゃけ過ぎ。他にも「第1話から順番に見て行って、第6話で『うーん、もういいな」って思ったっていう感じになったのね。それは率直にいって演出に対してなんですよ」とかかなり辛口。おっさんは怖いな。しかし中途半端に世辞で褒めるよりもこういうぶっちゃけたトークの方が面白くもあり。

たしかに、エウレカセブンは序盤・・・いや中盤直前までは「面白い・・・かも?」程度のアニメだった。つまらなくはないが、凄く面白いと言えるほどでもない、そんな感じ。動きが良かったり、ディテールがかっこよかったりはしたけれど、「本筋」が見えてこない。また特に序盤はいままでのアニメのオマージュというかパロディが強くてそれが鼻につくこともあった。序盤の月光号編はほのぼのまったりだったし、スカブ編もテンションはあまり高くなかった。

しかし、第25話でいきなり物語の雰囲気ががらりと変わり、「魅せる」演出になったと感じた。見ているだけでゾクゾクしてくるような言葉と映像。そして第26話でハジけた。私の語彙では何がどう、とうまく説明できないが、それまでのダラダラ感にもすべて意味があったと思わせるようなレントンエウレカの再開。いままで他の作品から借りてきていた「繋がり」だったものが、作品中での「繋がり」に変わり、その繋がりがようやくこの作品独自の模様を作りはじめた。この回だけで、エウレカセブンは存在価値を得た、と思う。

それまでは「とりあえず録画しておいて後で見る」程度だったが、今は「早く続きが見たい」と思うようになっているくらいだ。

ああ、安彦良和の話だったのに脱線してしまった。つまりはそういうわけで彼が言っている序盤のダラダラ感はわかる。それを真正面から突っ込んでいるのはこの本の中では安彦だけだった。しかしそのアニメにとって不利な話をあえて掲載するというこの本のスタンスは評価できると思う*1

演出とアニメーターの間に軋轢はあったようだが、ここ数話の勢いからして、その軋轢はもう乗り越えられたのではないだろうかと、勝手に期待している。


あとは気がついた細かい突っ込みどころ。

第2話でホランドが「ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん」という言葉を師匠から聞いた、という台詞があったが、この師匠について、アドロックであるという解説*2とチャールズであるという解説*3が両方載っていた。実際にはどちらなんだろうか。アドロック→チャールズ→ホランドという経路なのか、それともホランドが直接アドロックに師事していたのか。ま、今後明らかになるだろうけど。

p.124のニルバーシュの手の解説で「手のひらは柔らかいカバーで覆われており、手の甲には硬い装甲が付いている」とあるが、設定画の方には「手の平側は硬い」「手の甲側はやわらかいカバーでおおっている」と書いてる。設定画を見ると確かに手の平の方が硬そう。

p.149の変なSD-LFO占いで。最後のサマナー・ターミナスR606の日付が、2.19→2.20になってる。1日しかねーのかよ! って3.30の間違いだろうけど。って何で誤植まで見つけちゃってんだろ。

あとこれは公式ホムペの方でも訂正記事が出てたけど、「角川エウレカキャンペーン」の応募券に「見本」の文字が入ってしまっている。

関連

*1:ま、対談だから勝手に削ることができなかった、ってのもあるんだろうけど。

*2:p.22 中央付近「アドロックが呼んでいるぜ」の解説。

*3:p.90 「ねだるな。勝ち取れ。さすれば与えられん!」の項