完結しました。全9巻。堪能しました。
多くの伏線が張り巡らされ、また精神世界的なエピソードが多かった。こういう作品ではえてして広げた風呂敷を畳むことができずに終ることが多い。しかしエルゴプラクシーでは、多少説明不足の感はあるとはいえ、きちんとした着地点に降り立っている。プラクシーの謎、人類の謎、コギトウイルス、そして世界崩壊の謎。それらの点が線でつながれ、隙間があるとはいえきちんと面となって終わりを迎えた。
世間の評判はあまり良くないようだが、私はじゅうぶんに楽しかった。特に中盤以降の精神世界系のエピソードが多く、その点に関して評判が悪いようだが、私はそういうのがけっこう好きなので、むしろウハウハしながら見ていた*1。
しかしこのアニメ人気ないみたいね。DVDの最終巻が出たのに言及はほとんどないし。世間的評価が低いから? それともやっぱ地上波で放映しないとダメなのかな。
- 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
- 発売日: 2007/01/25
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以下バレあり。エウレカやナウシカの話もあります。
世界設定や物語の結末から、漫画版「風の谷のナウシカ」が想起される。崩壊した世界。その再生を待つ「真の人類」。真の人類がたち現れるまでの仮の住人、作られた存在であるもどき人類たちは、絶望の世界の中でも細々と生を営む。そしてその世界を守り、再生するために作られた「異形」たち。全ては「真の人類」によって仕組まれたプログラム。世界が目覚めれば不要とされ駆逐されるはずの異形やもどきたち。しかし主人公たちは崩壊の予感の中でも、生を知り、生き延びるために戦う道を選ぶ。多くの点でこの2作は符合するように思う。
もう一つ言えば、「交響詩篇エウレカセブン」にも通じるかな。一度星から逃げ出した民の帰還。視点は違うものの、状況は近いかもしれない。
中盤まではわりとまったり進行だったが、それ以降の流れは唐突かつ荒唐無稽。いやそのように見えていながらちゃんと理由付けがされていた。また様々な美味しい素材が散りばめられていた。夢を見るオートレイヴ、荒廃した世界、繁殖できない人類、オフィーリア、滅びたドーム、怪物同士の戦い、クイズショー、自分の存在さえあやふやな男と女、怪物が作った安寧。そんな感じ。
そして最終話に近づき、人々がエピソードがどんどん魅力的になっていった。ピノを探し命を落としてしまうラウル。リルに本音を語り「行くんだ」と告げるデダルス。このキャラ造りがもっと早くからできていれば、もっと各キャラに感情移入して見れたかもしれない。
ラウルやドノブ、遊園地のプラクシーなどがことあるごとに「破滅」という言葉を口にしていた。そんな抽象的かつ不確かなものになぜ恐怖し絶望していたのか、と思っていたが、たんなる雰囲気ではなくきちんとした納得の行く破滅へのシナリオを最後に明らかにしたのは見事。プラクシーたちが争う理由も、破滅へのシナリオの一部として組み込まれた闘争本能であるということを考えれば納得がいく。コギトウイルスもまた「不要なものの除去」のために用意されたものかもしれない。全てが絶望と破滅へと進む中で再生に至ったのは、プラクシーの影と、プラクシーから作られた偽りの人間と、コギトに感染したオートレイブ。純粋なもどき人間がまったく生き延びていないというのはある意味で「神の悪意の勝利」なのかもしれない。逆に言えば、この三者は神の摂理の外にいたがゆえに宿命に抗うことができた、のかな。
語ってみたいことは数あれど、うまくまとまりません。もう1度見直したらまた何か書くかも。
ともかく最後の最後のシーン、空からアレが降りてきてヴィンセントが一人語るシーンにはゾクゾクした。最後の最後でかよ!ってのはあるけど、最後に良いシーンを持ってこれるというのは余韻が残って良いね。
傑作かと聞かれると答えに窮するところではあるけど、個人的には好きな作品です。設定を踏まえた今の状態で、もう一回最初から見直してみたくなる。
余談
公式ホムペ、DVDのリリース情報が途中で止まってる。やる気ないなあ・・・。
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*1:エヴァの最終話や映画でさえもあれはあれで楽しめてしまう人間なので