コトバノウタカタ

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気になる絵

アルツハイマー病の画家の自画像

はいだしょうこ画伯の絵についての話題を追っていたらこんなものにたどりついた。少し前に話題になったもののようだが。


   あっさりさっくり アルツハイマーにかかると

  screenshot


アルツハイマー病にかかった画家が、自分を失っていく5年間に書いた自画像」とのこと。アルツハイマーの進行にあわせて絵の顔も歪んでいく。かなりインパクトのある絵だったので気になってしまった。

出典が気になり少しネット上で探してみたが、けっきょく見つからなかった。ネット上では上記のサイトで紹介されたのが初出かな? 画像を見た感じでは何かの本から撮ったようにも見えるが。


以下、根がひねくれ者なので少々懐疑的に。美術的な手法や構図などについてはまったく無知なのでわからないが、感覚的に。

まず3枚目の絵。目や鼻の位置、耳の大きさなどは歪んでいるが、色はきちんと収まっている。むしろ陰影などは前2枚よりしっかりと書き込まれているほど。

続いて4枚目でかなり崩れ、5枚目では人だかなんだかわからないようなデッサンとなっているが、この5枚目のデッサンには陰影もきちんと書き込まれていてしっかりと立体的に見える。アルツハイマーでも画家としての経験が残っているため、描く手法までは失っていなかったのだろうか。

そして最後の1枚。凹凸も陰影も消え、のっぺりとした顔に赤い目と無数の赤い斑点の抽象画のようになる。最後の1枚がそれまでと比べてあまりにも異質でショッキングだが、この絵を描いた段階でも、立体的なリアリティのある絵を描こうと思えば描けたということなのだろうか。ちょっと気になる。


これらの絵をこのように並べて、「アルツハイマーの進行によるものだ」と言われればそのように見える。が、たとえば「3枚目はピカソ風、4枚目はシャガール風(?)、6枚目は抽象絵画として描かれたものだ」と言われれば、なるほどそうだと思えはしまいか。あるいはこの中の1枚を取り出して「これはとある無名の画家が描いた自画像です」と提示されれば、なるほどこういう絵を描く人なのか。この人はこういう手法で自らを表現したのか、と判断するのではないだろうか。

逆に、ピカソやシャガール、ダリの絵を知らない人に、アルツハイマー統合失調症の患者の絵ですと提示した場合はどうか。


あるいはこれが確かにアルツハイマーの進行にともなって描かれた絵であるとしても、病気による絵の乱れではなく、アルツハイマーによって自分を失っていく恐怖をこの画家がこういう形で「表現」したという可能性もあるのではないだろうか。


芸術がわかる人が見ればその差は歴然としているのかもしれないが。

ルイス・ウェインのネコ

もうひとつ、上記の絵とともに語られることの多いルイス・ウェインの絵について。


   読冊日記 2003年 10月下旬
   ルイス・ウェインさんの描く猫の変遷


こちらは出自も明らか。ルイス・ウェインは100年ほど前に擬人化したネコのイラストで有名になったイラストレーターとのこと。晩年、統合失調症をわずらい、それにともなって絵柄が変遷したという。最初はネコの擬人化したイラストだったものが、次第に極彩色の輪郭を取るようになり、最後にはネコの形を失ってしまう。

いわゆるサイケデリックというものだろうか。派手な色と空間一杯に広がるとげとげしい輪郭。禍々しいとも神々しいとも取れる。後期の絵を見てまず思ったのは「バリ島のバロンとランダみたいだ」ということ(こんなの)。相方も同意見だった。バリダンスなども昔は薬を使ってトランス状態になって踊ったというし、バロンとランダもそういう非日常的な状態で想起されたイメージなのかもしれないな、と。

しかしこれもまた「こういう表現だ」と言ってしまえば通るような気もしないでもない。実際、このような紋様が絵画やデザインとして描かれることもあるわけだし。この絵が本当に病気と結びつくものなのか、要は「病気であるがゆえに生み出されたもの」なのかどうか気になるところ。もう少し具体的に「このように見えていた」のか、あるいは「こう描かざるをえなかったのか」、あるいは「こう描きたかったのか」を知りたい。


ちなみに、ルイス・ウェインのように高齢で統合失調症を発症するのは珍しい例だそうで。さらにはこういう絵を描きつづけるのも珍しいとのこと。

あと、発症する前の絵も実はけっこう怖い。


   Catland: Gallery

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読んでないけど、 商品紹介に出ててちょっと面白そうだったので覚え書き。