コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

祖母の入院

祖母が体調を崩し、入院した。風邪をこじらせたのが原因のようだが、齢90を越えているのでその他にもいろいろなところが弱っていたようだ。体が動かなくなり救急車で運ばれ、そのまま入院となった。数日の治療でとりあえず今は落ち着いたようだが、用心のために体力が回復するまで入院を続けるとのこと。

祖母は90歳を越えるというのに、頭はすごくしっかりしている。数年前までプロ野球を見ていて、私が知らないような選手まで知っていて誰がどうこうと話してくれたりした。ニュースを見ては年金問題や少年犯罪などの社会問題について語ったりもしていた。祖母は耳が悪いのでたいていは祖母がしゃべりまくって私が相槌を打つ、というようなやり取りだったが、おしゃべり好きな人なのでそれだけでも気晴らしになっているようだった。小言や近所の人に対する愚痴などを繰り返し聞かされることもあったが、そうやってガス抜きしていたのだろう。

足腰も弱ってはいたが、数年前までは自分で畑を耕し、野菜を作ってはうちや実家などにくれていた。さすがにここ数年はそれもしんどくなってきたようで、畑仕事は祖母と一緒に暮らしている叔母に引き継いだようだが。


その祖母のお見舞いに行って来た。体はそれなりに動くようだったが、ここ数日ベッドの上でじっとしていたので壁伝いに歩くには歩けるが、足腰に力が入らないようだった。意識ははっきりしていたので、こちらが心配になるほどしゃべり続けていた。入院することになるまでの状況、病院に入ってから計測器につながれて動けなかったこと、動けない期間が長かったので足腰が弱ってしまっているのではないかという心配など。

私の子の話題になり、子が幼稚園に行き始めることだし、犯罪に巻き込まれないように気をつけるよう言われた。また「小学6年くらいでも人を殺すやあな子がおるけど、そんな子にならんようちゃんと育てないけんで」などと釘をさされたりもした。

そんな中で祖母の弱音もちらほらと出てきた。「年ぃとると、どこがどう悪いっちゃあなわけではないだけど、生きとるだけで辛いだ」と。「でも回りの人間は、人が死ぬとやっぱり寂しいだらあけ、生きとってっていうけど、100にもなって生きとるのはえらい(しんどい)」「今回はまあ死にゃあせんだらあけど、年も年だけえいつそうなってもおかしゅうないけぇなあ」。こういう弱音は以前からもちらほら聞いていたが、倒れて病院に入っているときに聞くとずしりと響く。

私は「そんな寂しいこと言わんで」とぐらいしか返すことができなかった。もちろん祖母には生きていて欲しい。しかし無闇に「がんばって」と励ますこともできなかった。ただ強張った面持ちで祖母の話を聞いていることしかできなかった。