コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

ABARA

出た出た! ABARA! アバラ! 弐瓶! ニヘイ!

BIOMEGA」の1巻以来、久々に単行本が出た。しかも上下巻同時発売。なぜに1巻ずつ小出しにしないか、なぜにこんなに待たせるのか、などとちょっと愚痴りたい気持ちもないではないが、ともかく出たのだからよしとしよう。

ABARA (上) (ヤングジャンプコミックス)

ABARA (上) (ヤングジャンプコミックス)

ABARA (下) (ヤングジャンプコミックス)

ABARA (下) (ヤングジャンプコミックス)

場所は現代の延長線上にある未来のようでいて、しかしどこか現実とは違う異世界のような世界。「BLAME!」のように現実から隔絶された世界ではなく、工場や警察、病院などがあり、人が生活している世界。

そこに突如現れた、街を破壊し人を食らう異形、白奇居子(シロガウナ)。それに対峙するは黒奇居子(クロガウナ)である駆動電次。


BLAME!」が巨大構造物を延々と探索していく冒険漫画とするなら、「アバラ」は変身するヒーローが迫り来る脅威と戦うヒーロー漫画。異形による脅威という似たモチーフを扱いながらも、かなり雰囲気の違う作品になっている。

動き、変身シーン、世界観、細かい笑いやエグい造形、そしてもちろん建築物。いたるところにゾクゾクするようなエッセンスが盛り込まれている良作。ただ、どうしても「BLAME!」と比べて見てしまい、それゆえに気になる部分もちらほらと。


BLAME!」が比較的淡々とした物語であったのに対し、「アバラ」の疾走感は凄まじい。高速で空を飛び、建物を破壊しつつ激突する。まさにヒーロー漫画。いや、ヒーローアニメの乗りだ。前作「BIOMEGA」でもバイクによる疾走感を描いていたが、それを越えるような激しい戦闘。

しかし一方で、線や動きが激しすぎて戦闘状況がわかりづらくなっているような気がする。特に白奇居子と黒奇居子は色違いの似たような造形なので、混戦になると見分けがつきにくい。

BLAME!のときのような緻密でしっかりとした、静止画を連ねたような独特な「静」の戦闘描写ではなくなってしまったのはちょっと残念なような気もする。


序盤、効果音を写植で描くという試みをしているが、これはちょっと違和感があった。すぐに普通の描き文字に戻ったけど。ひょっとするとあの写植で特撮モノのような雰囲気を出そうとしていたのかもしれないが、評判はあまり芳しくないようで。


以下ネタバレあり。


奇居子の変身プロセスなどは、まさに弐瓶といった感じ。奇居子の変形後の形態はどれも似たりよったりで、もうちょっと特徴的にしてもよかったのではないかと思う。先にも少し書いたが、二人の黒奇居子や人型白奇居子が見た目で判別できない。珪素生命くらいは差別化して書いて欲しかった。

造形はうすね正俊の「EATER」に少し似てるかな。

http://ultra.shueisha.co.jp/UJ113/UJ113Present.html
EATER (1) (Beam comix)


ヒーローが敵の技術を使って作られた改造人間、というのは、仮面ライダーをはじめとする変身ヒーローものによくあるパターン。とはいえ2冊という短い間なので、主人公の葛藤が深く描かれるというところまでいかなかった。ちょっと残念。急ぎすぎずにもっとゆっくり描いても面白くなりそうな作品だったのだが。


ラストはちょっと判り辛かった。生き残った人間たちは船で外宇宙へ逃亡。同時に激しい爆発が起こり、星は消滅。白奇居子と黒奇居子が宇宙空間に取り残されて呆然。ってな解釈でいいんでしょうか?


ネガティブなことを書き連ねてしまったが、好きなものだから余計贅沢になってしまう、よくないクセなのであまり気にしないでください。先に書いた通り、作品としては素晴らしい出来。「BIOMEGA」も連載再開とのことなので、こちらもまた楽しみであります。

おまけ

アブラノの娘さんのモデルはMEGUMIですかね。

おまけ2

上下巻なのに、なんで下巻が(3)なんだろ。