コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

プラネテス

1巻は以前に買って読んでたんだけど、ぼちぼちな感じだった。でしばらく放置していたのだけど、2巻を読んだら加速して、そのまま3、4巻一気に読んでしまいました。すごいね。傑作です。

2070年ごろ。人類は宇宙に進出していた。宇宙のゴミはデブリと呼ばれ、ほんの小さなものでも、加速度を得るときわめて危険な凶器になる。それを回収するデブリ屋の話からはじまる。


先にアニメ版を見終えていたわけだけれども、1巻を読んだ時点では出来事の順序を並び替えただけで話は同じだなーと思って見ていた。しかし全部読み終えた後ではかなり違う印象。「風の谷のナウシカ」や「AKIRA」のアニメ版と漫画版くらい違うかも。

ネタバレは後に回すけれども、当たり障りのないところで書けば、まず登場人物がかなり違う。アニメ版では登場人物がかなり多くなっていて、しかもその人間関係も複雑になっている。話が長くなるがゆえのテコ入れなのかな。アニメ版はキャラが増えてドラマが広がる反面、話の焦点がボヤけてしまったような気がする。

一方で漫画版は、登場人物が少ないものの、話がぎゅっと凝縮されて密度が濃い。メインテーマとなっているハチマキの葛藤がしっかりと描かれていて、アニメ版よりも比較的わかりやすく、納得のいく流れだった。

単にSFモノというだけでなく、それを題材にした「愛」を語る物語。ちょっと臭いけど、そんな感じに仕上がっている。


アニメ版、漫画版どちらも面白いが、両方見るつもりならアニメ版から見るのがお勧めかな。


そろそろネタバレ込みで。

1巻はデブリ屋の状況を見せ、2〜3巻でハチマキの葛藤、4巻はサイドストーリーとエピローグな感じ。余談のような話ではあったけどこれはこれで面白かった。


アニメ版と漫画版の一番の違いはやはりキーとなる人物、タナベだろう。見た目から性格からかなり違う。アニメ版ではちょっと頼りない口うるさい小柄の女の子女の子したキャラだったが、漫画版ではめちゃめちゃ「男前」。見た目も性格も。身長も高いし(3巻の表紙参照)、口先だけではない行動力もある。印象的な台詞も多い。またアニメ版で描かれなかったタナベの過去も描かれ、それによって彼女のキャラの深みが増している。顔が濃くて男っぽいので女性的魅力という点では微妙な評価になっているようだが、人間的魅力としては漫画版の方が上かな。

そういうキャラなので、アニメ版ではいまいち納得できなかったハチマキとの関係が親密になっていく流れも、漫画版では比較的すんなりと受け入れられた。そりゃあんなところであんなキスされてたらその後気になってしかたないだろ、と。夢の中で銀河を見るハチとタナベ、お互いの弱さの許容、月を見ながら「おいしそう」とつぶやく二人。つながれる手。穏やかな愛。

面白かったのが、4巻後半のフィーとタナベのやりとり。あの流れでしっかりと「もちろん」と答えられるタナベは確かにすごい。


ハチとタナベの関係にとどまらず、物語の作り方がすごく上手いと感じた。黒いネコ、白いネコ、それがタナベのクロにリンクする。また4巻でフィーが落ち込み、自分を見失って流れ星に願いごとをしそうになったときに吠える犬。ロックハートのエピソード。各々のエピソードがすごく強く良い余韻を残す。


もっといろいろ書きたいけど言葉がまとまらないなー。とにかくほんと名作です。

プラネテス(1) (モーニングKC (735))

プラネテス(1) (モーニングKC (735))

プラネテス(2) (モーニングKC (778))

プラネテス(2) (モーニングKC (778))

プラネテス(3) (モーニングKC (863))

プラネテス(3) (モーニングKC (863))