コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

コンスタンティン

マトリックスの呪縛

キアヌで特撮いえば「マトリックス」の呪縛から逃れることはできないわけだが。この作品もそういう理由で見たいと思った私はミーハー者です。実際に見てみると、確かにマトリックスぽいところなきにしもあらずだが、どちらかというと旧来の悪魔モノを踏襲し、そこに現代的なオサレ感を加えたと言った方がしっくりくる。そんな感じの映画。典型的なハリウッドぽい映画ではあるのだけれど、見ました終りました、ではなく、見終わった後にいくつか考えさせる点を残してくれている。コテコテだけど悪くない。そういう映画。

概要

主人公ジョン・コンスタンティンは敏腕エクソシスト。人間界に存在する「ハーフブリード」と呼ばれる悪魔や天使の送り込んだ存在を見抜く能力を持ち、人間界で不正を働く悪魔を地獄に送り返している。ニヒルでクールで、でもどこか少し抜けている男。神と悪魔は互いに直接人間界に関わることができないというルールの元で競い合っているが、その均衡を崩す「運命の槍」が発掘されてしまう。

こんな感じ。天使と悪魔の対決、エクソシスト、と、コテコテバリバリのオカルトモノ。

女神転生

天使と悪魔の対決と聞いてまず思い浮かぶのは「真・女神転生*1。実際この映画の世界設定や天使と悪魔の位置は、女神転生のコンセプトに近い。ま、女神転生のコンセプトの方がもっとずっと深いけどね。でも女神転生好きにはぐっとくるところはあると思うし、逆にこの映画を気に入った人は女神転生の世界観に何かを感じることができるだろう。古いゲームなので、今からプレイするのはちょっとしんどいかもしれないけど。

導入

映画がはじまると、いきなり悪魔祓いのシーン。天井を這う女性。ベッドに縛り付けられ、醜い顔つきになりしわがれた声で喋る。これは映画「エクソシスト」の影響を受けているっぽい。いきなりひきつけけられる導入。上手い。

天使の黒い羽

特撮映画ということで見所はエフェクト。世間的には特殊効果が地味目と評価されているようだが、私はこのくらいでちょうどいいと思う。むしろ悪魔の表現に関してはちょっとやりすぎ。もっと抑えてもいいくらい。

魅力的なのはやはり天使。ぶわっと羽を広げる様は壮観。しかし天使の羽は全て黒い。黒いゆえにまた映像に陰と深みを増している。単に綺麗なだけでなく、そこに独特のシニカルさを感じる。

一方で悪魔の造形は非常にありがち。あまり目を見張るところがない。「ジェイコブス・ラダー」の想像力で魅せる悪魔を見たばかりだから余計にそう思うのかもしれない。ま、従来の殻を破る悪魔のイメージを作り出すというのはなかなか難しいとは思うけど。


以下、徐々にネタバレ増えていきます。

媒体 DVD
もう一度見たい △(印象的なシーンだけの抜粋だけでも)
劇場で見たい △(いいかも)
最後まで集中して見れた 
他の人にも薦めたい △(キリスト教がある程度わかってないと話がわからんと思う)
印象的なモノがあった
マニアック ×

黒い羽のガブリエル

男性とも女性とも見える中世的な姿、すらりと伸びる肢体、黒く大きく広がる翼、そして包帯を巻いたような衣と、腕にぶら下がる精神病患者識別用のタグ。かっこいいです。素敵です。そしてメガテンぽいです。

ただ、後半の登場シーンでの台詞については多少不満が。もうちょっと凝って欲しかった。コンスタンティンに己の行動理念を説くシーン、なんだか嫉妬に狂ったワガママ者にしか見えない。もっと強く、気高く、そして残酷に魅せて欲しかった。

それに対するコンスタンティンの台詞も「くそったれ」という凡庸なもの。もう少しひねった台詞吐こうよ。「崇高な嫉妬だな」とか「それは神への言い訳か?」とかさ。いいシーンなんだからもうちょっとスカッとする台詞を入れて欲しかった。

ちなみにこのガブリエル、四大天使のガブリエルと同じ名だが、別物という解釈がなされているようだ。最上級の天使ガブリエルが人間界に常駐して簡単に神を裏切るというのはちょっと違和感がある、ということ不満に対する後付け解釈かもしれないけどね。真偽のほどは不明だけど、別物と考えた方がしっくりくるので然るべく。

サタンのおっさん

サタンの登場シーンは、話の流れ、映像表現ともにかっこよかった。コンスタンティンが自分の死と引き換えに悪魔を召還。呼び出されたサタンはスーツ着た陽気なおっさん。素敵だ。他の悪魔みたいに悪魔悪魔していないところも好感。

しかしここでひとつ問題。人間界に来るためにマモンはさんざん苦労しているというのに、サタンはコンスタンティンの魂を迎えに来るためにあっさりと人間界に来てしまう。ここの部分はちょっと設定を無視してるような気が。

時間が止まっているし、あれは人間界というよりは半分地獄になっているという説もあるが、時間の流れが戻った後もサタンはそこに存在しているし。

あるいはあのサタンもハーフブリードなのかな。異能はあるけど、たしかに地獄の王を示すほどの派手なことはしていないし。

戦いの後、神に召されようとするコンスタンティンを取り戻すために、その寿命を延ばすサタン。生きていればまた罪を犯すこともあるだろう、というのもちょっと御都合主義かと。ま、「そうくるかい!」と思ってちょっとニヤリとしてしまったけどね。

規則だから・・・裏があったのね

最後のバトル後、コンスタンティンとヒロインとの間の台詞。ここが意味深。コンスタンティンはすべてを知っていたのか、それとも「神には抗えない」と観念したのか。

どちらにしても結局は全て神の思惑の内だった、という示唆を含んでいるようだ。槍を巡って天使と悪魔、そして人が互いに争うこともまた「神の用意したゲーム」に過ぎない。そのゲームの鍵である槍は、次のゲームのために再び封印されなければならない。それが「神の遊びのためのルール」。そういうことなのだろう。「神は子どもだ」というコンスタンティンの言葉がすべてを言い表しているのかもしれない。

今作、けっきょく最後までキスシーンがなかったのは好感。バイオレンスはお腹いっぱいだったので、この上ラブシーンなんかやられたら満腹すぎて気分悪くなってしまうところだった。

エンドロール後のチャド

スタッフロールの後、チャドが天使となって飛び立つ。ここの解釈もよくわからない。チャドはもともとハーフ・ブリードだったのか。あるいは働きを認められてハーフ・ブリードとして生まれ変わったのか。前者であればコンスタンティンが見抜けなかったのが不自然。後者であれば・・・人ってハーフ・ブリードに生まれ変わるものなの? どちらにしても微妙に違和感が残る。シーンとしてのインパクトはあったんだけどね。

関連

*1:わからない人ごめんなさい