コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

ホワイトバンド

3秒に1人、子どもが貧困から死んでいます。食べ物がない、水が汚い、そんなことで。この状況を変えるには、お金だけでなく、あなたの声が必要です。貧困をなくそう、という声を表すホワイトバンドを身につけてください。

うちの妹も付けていたのでちょこっと言及。*1

ということで、「私は貧困問題を考えてますよ」という意思表示のためのリストバンドなのだそうだ。このバンドを付けたからといって何をするというわけでもない。単に「気にしてますよ」とアピールするだけのようだ。嫌な言い方をしてしまえば、社会問題のファッション化、飽食社会の人間の免罪符、というところだろうか。

いや問題意識を持つことを否定するつもりはない。この運動そのものに対しても、異を唱えるつもりまではない。しかし偽善とまでは言わないが、ひねくれ者としてはいちまつの疑問を禁じえない。このバンドを付けている人は「貧困問題についてどういう取り組みをしていますか」と質問される覚悟くらいはしておくべきだと思う。

募金0円

まあ私のひねくれ具合などどうでもいい。で本題。このホワイトバンドを販売している団体が問題視されているらしい。そのあたりのことをまとめたサイトがこちら。

トップページしか見ていないのだが、どうやら300円で売られているこのバンドの売上は全て、諸経費やNGOへの資金に回され、貧困で困っている人たちへの直接の募金は1円もないということらしい。募金を標榜しているわけではないので詐欺には当たらないようだが、この組織自体への疑惑も取りざたされている様子。アメリカでも同様のキャンペーンが繰り広げられているが、そちらではNGOの活動費は含まれていないそうだ。事の真偽はよくわからない。しかしこの話を聞いて思ったことがひとつある。

これ、価格を600円にして半分の300円を寄付としておけばみんな納得したんだろうか。

そうなると売上の半分を寄付である。聞こえはいい。600円という価格もまあそれほど法外ではない。そうしておけば、この団体は「売上の半分をまるまる寄付した立派な団体だ」ともてはやされたのであろうか。典型的な朝三暮四だが、それならみんな文句を言わなかったような気がする。

いやそれでも「売上の一部をNGOの運営資金にしている」という批判の声はあがっただろう。しかし「寄付金0円」という大仰な煽り文句は使えなかったわけで。そういう意味では問題意識を煽っている方もずるい情報の使い方をしている、と言えるかもしれない。

偽善であれ自己満足であれ

最後に少しだけ元の話に戻るが。偽善であれ、自己満足であれ、免罪符であれ、その資金がちゃんと問題解決のために使われているのであれば問題ないと思う。所詮正義や人助けなんて、突き詰めればすべて偽善であり、自己満足でしかないのだ。滅私の奉公であっても、自らの命を捧げた人助けであっても、それはその人がそうすることによって満足を得られるから行うだけのことなのだ。だからそれが自己満足だからといって責める気もない。

そしてたとえ直接の募金ではなくとも、そのお金でNGOが正しく活動してそれが貧困解決へと繋がるのであれば、それはそれで良いと思う。この件に限って言えば、購買者の同期や売り方の手法がどうあれ、正しい結果があればそれで良いと思う。

しかし募金には常に疑惑が付きまとう。命を救おうとしている者を疑うなんて、という声もあろう。しかし悲しい話だが、命を救おうとする人間のふりをして悪事を働く者も確実に存在する。この件に関してはまだ何が正しいかはわからないが、「善」を振りかざすものを手放しで受け入れられるほど、私はまだ人間ができてはいないようだ。

ただ、このホワイトバンドで本当に誰かが救われたかどうか。それは少しだけ考えてみた方が良いと思う。このホワイトバンドから、正しい結果は見えてきますか?

余談:宣伝費

日本での流通費、宣伝費ってやっぱ高いんだなあ。流通費は仕方ないにしても、宣伝費なんて使わなくてもネット上でネタばらまいたら勝手に広まったのではないだろうか。まあ意識改革を求めるというのが建前なんだから、宣伝行為自体を責めるわけにもいかないが。

しかしNGOよりも実はその広告会社こそがこの件の黒幕だという話もあり。広告費として当然収益があがるわけで。疑惑を晴らすためにも、広告宣伝も全てボランティアで、ってことにはできないものかね。

関連

言及記事多すぎなのでとりあず目についたものだけ。

*1:ちょこっとどころではなくなっているが。