先日何気なく「世界一受けたい授業」を見ていたら、安斎育郎氏が興味深い話をしていた。
霊を信じるかではいと答えた割合
- 1946年 4.4%
- 1988年 77.6%
そういえば以前に似たような話をどこかで聞いたことがあるような気がする。あれは「姑獲鳥の夏」での京極堂の科白だっただろうか。
おそらく戦後まもなくというその頃はまだ、幽霊よりも神や妖怪などの方がメジャーだったのだろう。人の立ち入れぬ未開の地、光も届かぬ闇、薄暗い隙間、誰もいない時間。そういうものが満ち溢れていた時代、幽霊という「人の慣れの果て」よりも、「人ならざるもの」への不安や畏怖が強かったということだろうか。
戦後すぐの混乱期だからどれだけ正確なアンケートが取れたのかという疑念もあるが、それにしても4%という数値はかなり低い。そもそも幽霊というものの認知率が低かったのか。戦後の混乱期ゆえに霊などにかまけている余裕もなかったのか。
いっぽうで注目すべきは、現代*1、70%以上もの人が幽霊がいると思っているという事実。こちらはこちらでかなり高い。科学が進歩したと言われる現代で、これだけの人間が霊の存在を信じているというのは驚きだ。「昔はそういうものがわからなかったが、それが判るようになってきた」ということはまったくない。科学が進歩し、霊の存在を否定するような結果はあっても、その信憑性を裏付けるような結果は皆無だ。にもかかわらず、信じている人間が増えている。どんなに科学が進歩しても、人は科学ならざるものに信を置いてしまうのかもしれない。
70%以上という数値の理由のひとつには「情報伝達の発達」ということがあろう。以前は口伝や一部の娯楽でのみ流布されていた「霊概念」が、現在ではテレビ、雑誌、そしてインターネットなどいたるところに満ち溢れている。メディアの進歩が一種のデマゴギーの氾濫を引き起こしていると言えるのではなかろうか。特に不安や恐怖を煽るようなデマは信じられやすい。幽霊というのはその一番典型的な例であるのかもしれない*2。
私個人としては「霊なんていない。でも怖い」という中途半端な立場。理系人間としては霊の存在を認めることはできないのだが、暗闇や不意の物音はやはり怖い。幽霊映画を見た後などは一週間くらいトイレやお風呂でビビってる。これってけっきょく「信じてる」ってことになるのかな。でも実際に幽霊を見たこともなければ、霊感も皆無。ただビビってるだけです。まあそんなもんです。
私も京極堂のように「この世には、不思議なことなど何もないのだよ、関口君」と言ってみたいのはヤマヤマなんだけど、世の中不思議なことダラケです。私が理解できない、という意味で。
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