コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

PLUTO (2)

PLUTO (2) (ビッグコミックス)

PLUTO (2) (ビッグコミックス)


強いぞアトム。凄いぞアトム。でもこのアトムは強くありません(強いのかもしれないけど)、空も飛びません(飛べるのかもしれないけど)、目からレーザーも出ません(出るのかもしれないけど)。


ネタバレなんで隠します。


前巻の最後にアトムが登場したときにも驚いたが、本当にアトムは「普通の少年」だった。いや普通ではないが、普通に近い少年。普通に近いということに意味のある少年。

手塚治虫がアトムで描こうとしたのと同様、浦沢直樹はこの作品で「心」というものの核心に触れようとしている。本来心を持たないはずのロボットたち。しかし彼らの認識の中には「悲しい」「切ない」「同情」「家族を想う心」などの感情が芽生え始めている。アトムはゲジヒトの記憶を覗き涙さえ流す。それは人間の模倣でしかないのかもしれない。「涙を流す」という行為さえ、「悲しい話を聞いた」ことへの反射としてプログラムされているに過ぎない。しかし心とはすなわち機械的なシステムでしかない。人間の心とてしょせん同様のものではないのか。そういうテーマを、物語の中で自然に描いていっている。


浦沢直樹の描く未来はSFっぽくない。攻殻機動隊のように、ロボット同士で記憶の交換や共有をやっているのに、なぜか未来っぽくない。彼に画力がないというのではない。彼の画は自然すぎるのだ、たぶん。悪く言えば古臭いデザイン。でもこの作品にはそれがぴったりと合っている。人とロボットが共存する未来。それが現在と地続きであるという印象を与える。


しかし、今作においても黒幕が出てきた。「MONSTER」「二十世紀少年」に続き、また巨悪としての黒幕の登場。原作がそうなのかもしれないが、ちょっとパターン化されてきているようで少し不安。


しかし犯人は誰なのか、原作を読んでないのでわからない。痕跡を残さない人間は存在しないが、ロボットは人を殺せない。しかも、殺害現場から逃げ出し、ビルからビルに飛び移る「人間」を警官ロボットが目撃している。サイボーグ、かな?