コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

御侠(おきゃん)*


「せっちゃんはおきゃんでまるで男の子みたい」というのは、小学校の教科書に乗っていた「どろんこ祭り」の出だしだっただろうか。話の内容はあまり覚えていない。普段は男勝りな女の子が、どろんこ祭りのときにふと女の子らしさを見せた、とかそんな話だっただろうか。

しかし「御侠(おきゃん)」という単語、普段使うことは滅多にないが、習ってから二十年も経つ今でもなぜかしっかりと耳に残っている。「きゃん」という日本語にはあまりない発音のせいかもしれないし、この導入部分の文句が凄く耳に残りやすいからかもしれない。

言葉の意味を紐解くと、「侠気*」と書いて「おとこぎ」と読むように、「侠(きょう)*」とは男らしい様を表す。これを「侠(きゃん)*」と読む場合は「男っぽい女」という意味になるようだ。英語で言うなれば「boyish」とか「mannish」という言葉になろうか。


他にもそういう女の子を表す言葉に「御転婆*」というものがある。むしろ「御侠」よりもこちらの方が馴染み深いだろう。「お転婆」の語源には諸説あるようで、オランダ語が語源である、という面白い説もある。

おてんばの語源・由来
おてんばを「お転婆」と書くのは当て字で、語源は諸説ある。

  1. 「馴らすことのできない」という意味のオランダ語「ontembaar(オンテンバール)」からとする説。
  2. 女の子が出しゃばって足早に歩くことを「てばてば」と言い、それに接頭語「お」を付け「おてば」と言ったことからとする説。
  3. 「御伝馬(おてんま)」という宿駅で公用に使われた馬は餌も十分与えられ、普通の駄賃馬よりも元気良く跳ね回るので、そこから転じたとする説。

この中で1番目のオランダ語説が有力とされてきたが、「おてんば」は18世紀の中頃から使われているのに対し、「てんば」は18世紀初頭には使われているため、オランダ語説は成り立たず、「てんば」という語に接頭語の「お」が付いたと考えるのが妥当である。
中世末期から近世にかけて、機敏なさまを「てばし」や「てばしこい」と言われていたため、この「てば」が語源となり、2の説の「てばてば」や「おてんば」が生まれたと考えられる。

「御転婆」は当て字ということだが、お婆さんを転ばせてしまうほど元気のいい子、というニュアンスがあり、あながち意味のない当て字でもない気がする。


男の場合は「やんちゃ*」という言葉を使う。これもこれで、改めて考えてみると奇妙な響きの単語だ。語源としては子が言うことを聞かないときに発する「嫌じゃ(いやじゃ)」がなまったという説と、粘つく脂(やに)になぞらえた「脂茶(やにちゃ)」から来ているという説があるという。どちらにしても変な言葉だ。