コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

学び舎のあれこれ

id:exhum氏の「ある感傷」を読んで。

うちの大学は田舎の三流大学にしては比較的単位取得などが厳しく、特に工学部などはものすごい数の留年生、退学生を出すようなところだった。以前にも書いたかもしれないが、私の学科の入学者数は70余人で、4年ストレートで卒業できたものは半数にも満たなかった。途中でドロップアウトした者も2割を越えるだろう。入るは優しく出るは難い。そんな大学だった。

それでも卒業に関しては過分に手加減をしていたと思う。そうでなければ私のようなものはとても卒業などできなかっただろう。また古い大学ゆえにコネでの就職率は比較的高く、そういう意味では頼りになる学校だったのかもしれない。就職難と言われていた状況の中でも、同級生の中にはわりと名のある会社に行った者も少なくない。とは言っても私はそのコネにうまくあやかることもできず、けっきょく卒業間際の3月に滑り込みで地元企業に就職してしまったのだが。


さてその大学でのお話。大学の教師というのは一風変わった人が多く、またそれぞれに個性が強い。あの教師とこの教師のポリシーが真逆だったなんてことも珍しくない。我々は単位取得のためにそれぞれの教師のポリシーを理解し、それに合わせて振舞っていかなければならなかった。


まず一番わかりやすい違いが、出席に対する考え方。きっちりと出席を取る授業、とりあえず取る授業、そしてまったく取らない授業、いろいろだった。きっちりと出席を取る授業では、人数分だけ出席チェックの紙を配り、代返さえできないようにしていた。そうやって出席を取る授業では、出欠状況が成績に反映された。たいていは出席日数に応じて成績に加点、というものだったが、中には2割以上欠席があった者は自動的に単位不認定という厳しいものもあった。逆に少数ではあったが、出席さえしていれば単位がとれるという授業もあった。

出席をに重きを置くものは「過程主義」だ。思うような結果が伴わずとも過程を評価する。あるいは過程により救済する。これはおそらく日本特有の概念だと思う。西洋などでは完全に実力主義、結果主義だ。どんなに努力をしても結果が伴わなければ意味がないとみなされる。日本では「努力をすることそのものに価値がある」という風潮があり、それを評価する者がいる。その是非についてここで論じるとまた長くなるので別の機会に回したいが、大学でもそういう「過程主義」の教師も確かにいた。

出席を取らない授業は当然のごとく出席が成績に反映されることはなく、こちらは完全に「結果主義」だ。これが大学らしいといえば大学らしい姿勢なのかもしれない。ただしその場合、授業に出てない奴は、授業に出てる人からノートや範囲を貰って試験を受けることになる。それはなんとなくズルいと感じていた。出ないなら出ないなりのリスクを背負わねばなるまい。ノートを貸す側が何かの利益を得られるならまだいいが、たいていは無料奉仕だった。結果的に勉強ができる人、というよりも、要領のいい人、が得をするシステムとなっているように思う。


ダラダラと長くなってしまっているので、私が経験したちょっと変わった成績評価や授業形態の話に移ろう。


ドイツ語
ドイツ語の授業で、レポートは授業中に見た、ドイツ語版『モモ』の映画の感想文。授業で習った程度のドイツ語能力で話が理解できるはずもなく、『モモ』を知らない人にはチンプンカンプンだったようだ。私はたまたま同じ映画の字幕付き英語版を見ていたので内容が分かって助かったが。

同じドイツ語の授業で、後期のレポートは「なんでもいいので読書感想文」というものだった。ドイツ文学でさえなくてもよい。とにかく読書感想文を提出。


ドイツ語文法
別のドイツ語の授業。その教師はとにかく「授業中に私語をするな」というポリシーを持っていた。私語さえしなければ、授業に出なくてもいいし、寝ててもいいし、編物をしててもいい。とにかく私語だけはするな、と言っていた。

その授業では、授業中に問題を出し、それに答えた生徒に1〜3点を与え、それをテスト結果に加算するという方式を取っていた。それだけではなく、救済措置として「魔王」をドイツ語で歌って録音し、提出した者に10点を加算、というようなこともやっていた。私は歌は歌わなかったが、みんなが自分で魔王を吹き込んだテープを持ち寄っている光景はちょっとおかしかった。


情報系
ドイツ語文法教師とは逆で、とにかく授業中に寝るな、という教師。寝るくらいなら授業に来るな。出席もとらないし、寝たい奴は授業に出てくる必要もない、と言っていた。完全実力主義者で、頭のいい奴大好き。でも女の子も大好き。でも成績は甘くつけない、という人だった。


物理学
とある物理学の授業。いちおう授業の最初に出席を取る授業だったが、出席だけとって教室を出て行く生徒が続出。その生徒の態度に教師が激怒し、授業の最初と最後に出席を取ることになった。まあ教師の気持ちもわからないではない。出席だけとって出て行かれたらそれは腹も立とうというものだ。しかし何十人も出席している授業で2回も出席を取るというのは、出席を取られる方もかなり面倒くさかった。


生物工学
工学系の専門の授業。普通のテストの後に、解答用紙の裏に何でもいいので「何か面白いこと」を書いていれば加点するというもの。「おいしいカレーの作り方」や「おすすめの温泉」などを書いた人が高得点を得たらしい。


制御系
工学系の専門の授業。光による距離計測技術を使った何か面白い新しい商品を考えて書け、というテスト。これがいざとなるとなかなか思いつかない。既にあるものや、ありきたりなものばかり出てきてなかなか斬新なものが出てこなかった。試験勉強をしなくてもすんだという意味ではありがたいテストだったが、これはこれでけっこう困った。


こんな感じ。変な授業ほどよく覚えている。タメになったかどうかは別にして。