コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

精霊飛蝗(しょうりょうばった)*


「精霊」と書いて「しょうりょう」と読む。お盆のことを「精霊会(しょうりょうえ)*」と呼んでいたが、その頃によく現れるのでこの名がついたという。「精霊」には死者の魂という意味もあるので、なんとなくこの虫に霊が取り付いているような印象も受ける。お盆の頃であれば、ちょっと里帰りしてきた祖先の霊だろうか。
飛び跳ねるときにチキチキと鳴くことから「チキチキバッタ」と呼ばれたり、そのひょこひょことした動きから「コメツキバッタ」「ハタオリバッタ」と呼ばれることもある。北海道以外のほぼ日本全域に生息しており、都会の空き地などでも見られるということで、日本人にとっては馴染み深い虫と言えるだろう。
以下、ある意味グロいので虫が苦手な人は注意。


私も子供の頃にはよくこの虫を捕まえて遊んでいた。飛び跳ねはするものの、案外に動きは遅いので捕まえやすい。しかしあるときから、この虫を非常に気持ち悪いと思うようになってしまった。小学校の校庭でこの虫を見つけ、いつものようにとっ捕まえた。足を持ってひょこひょこさせて遊んでいたのだが、その足がポロリと取れてしまったのだ。虫には痛覚がないので別段痛そうでもないのだが、足が取れ体液が流れ出る様を見ていたら、それまでなんともなかったこの虫が酷く気持ち悪く見えて来てしまった。虫を傷つけてしまった罪悪感と、生理的な嫌悪があいまって、私はその場から逃げた。
たぶんその頃からだろう、私は虫全般が苦手になった。恥ずかしながら、家内に現れたゴキブリなどを退治するのもひと騒動だ。半泣きになりながら叩き潰し、その潰れた残骸を息を止めて目をつむりながら始末する有様。ゴキブリが空中を飛び回ろうものなら、大きな悲鳴をあげながら逃げ惑ってしまう。我ながら本当に情けないが、生理的にダメなものはどうしようもない。セミの腹などもだめだ。最近はずっと触っていないが、昔あれほど好きだったカブトムシも、今ではあまり好きではない。角を持って何度か首がもげてしまった経験がトラウマになっているのかもしれない。

そもそも、虫などの外骨格の生物の形状、形質というのは、常軌を逸している。他の生物とあまりに違うのだ。血の色まで違う*1。機械は嫌いではないが、虫の機械的な造形は生物としてどこか異常だ。飛び回るし、変なもの撒き散らすし、ひどく脆い。腕や首などが少し力を入れただけで取れてしまう。しかも痛覚がないので、そういう部分がなくなっても平気で動く。首がなくなってさえも動いている。ああだめだ、思い出しているだけでも鳥肌が立ってくるのでここまでにしておこう。

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*1:これは外骨格の生物に限らないが。