コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

Lovers - 十面埋伏

久々に映画館で映画を見てきた。チャン・ツィーイーと金城武主演、チャン・イーモウ監督の「Lovers」。前作「Hero」がけっこう楽しめたので、今回も劇場に足を運んでみた。「Hero」のような強い余韻はなかったが、個人的にはけっこう満足。

まずはネタバレしない程度に全体について。「Hero」よりも幾分現実的な話になって、突拍子もないアクションは減っていたので少し安心。ただ、大きなテーマを抱えていた「Hero」に比べ、ストーリーとしてはわりとこじんまりとまとまっていた。相方曰く「よくある感じの話」だそうで。

前半の畳み掛けるようなアクションは見ていてすごく心地よかった。反面、後半はちょっとだるだるになっていたことは否めない。「Hero」のようなラストの大盛り上がりはなく、ストーリーを追っていくだけで終わってしまったのはもったいない。ただアクションをすればいい、というものではないが、前半のテンションを保てたらもっといい作品に仕上がったと思った。

役者について。久々に金城武を見た。日本でドラマをしているときよりも何倍も生き生きして見える。台詞も何を言っているのかはわからないが、日本語でぼそぼそしゃべっているのとは全然違う感じ。この人はやっぱり向こうの映画の方が性にあってるんだと思う。ストーリーとあいまって、男ながらに「かっこええー」とつぶやきたくなるようなシーンがいくつかあった。


チェン・ツィーイー。前作「Hero」で知り、最近は「アジエンス」のテレビCMで見かける中国の女優さん。元々踊りをやっていたというだけあって、動きが滑らか、決めポーズもすごくきまっている。特に序盤の踊り子のシーンはすばらしい。アクションもしっかりできるし、日本にはなかなかこういう女優さんっていないと思う。

余談だが、中国の女優って本当にきれいだと思う。なんというか、神秘的な雰囲気が漂っているというか、ともかく日本の女優にはない雰囲気を纏っている。ケリー・チャンフェイ・ウォン、ミッシェル・リーなど、きつめだけど印象に残る女優が多い。ツィーイーはきつめではないが、やはり強く印象に残る女優のひとりだ。単に私の個人的な好みというだけかもしれないが。

そして特筆すべきはやはり和田恵美の衣装。服装なんかにほとんど興味もないし、センスもない私だが、この人の衣装にだけは心動かされてしまう。「セル」しかり「Hero」しかり、そして今回の「Lovers」の衣装もやはり良かった。踊り子の派手な衣装も、一風変わった工夫がしてあり、すごく脳裏に残る。その他のすっきりした感じの衣装でも、うまくまとまりつつも目に焼きつくような強い個性を持っている。この人が衣装を担当しているだけで、映画の質が数ランクアップするような気がする。

以下、少しネタバレ。

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今回のテーマは、「Hero」の対極にある。大義のために恨みや憎しみを押しこらえた「Hero」に対し、「Lovers」は個人的な愛のために大義を犠牲にしていくという話になっていた。前作は終わった後に、考えるさせられる部分や悩む部分もあったが、今回は与えられた悲劇を甘受するのみだった。余韻が薄いというのはそのせいもあるだろう。

しかし、「Hero」よりはマシだったとはいえ、やはり非現実ぽい部分が目について、我に返ってしまうことがあった。前半の目が見えないのに心眼で戦う小妹、強すぎだろ、という突っ込みはまあ後に解消されるので置いておくとして、竹やぶで飛びまくるシーンと、死に掛けの小妹をほったらかしで戦う最後のシーン。「おいおい、そりゃねーだろ」と突っ込みいれたくなってしまった。それと、武術の達人のくせに、随風は小妹の盲目の演技に気がつかないのかよ!とか。あとは微妙に笑えるシーンが。金城武が馬に乗ってるときの「じょっ!じょっ!」っていう掛け声。笑うシーンではないのはわかっているけど、なんとなくおかしかった。

でも中国のファンタジー映画ってよくそういうところがあるような気がする。「Hero」でも、湖の上を跳ねながら奇妙なチャンバラやってたし。ある種の形式美だよね、たぶん。

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