コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

鳥取県の西と東

鳥取県の東部と西部は仲が悪い。文化圏や町の性質が違うのだ。ゆえになかなか混じりあうことができないらしい。判りやすい例をあげるとすれば、関東と関西が仲が悪いのとよく似ているかもしれない。

東部と西部はもともと違う国で、東部は因幡、西部は伯耆と呼ばれていた。廃藩置県だかその後だかに、その二つが統合されて鳥取県となったのだ。そのあたりが、意識の断絶を招いてしまっているのかもしれない。

東部と西部は地理的に離れているがゆえになかなか理解が深まらないというのもあろう。同じ県内でありながら、鳥取−米子間は車で1時間半から2時間はかかる。電車も数えるほどしか走っていない。行き来がし辛いのだ。

どういうところで意識の断絶があるかといえば、たとえば「鳥取県内の観光地は」と聞かれた場合、東部の人間は鳥取砂丘、西部の人間は大山や境港を上げるだろう。東部の人間に「鳥取県内の砂丘と言えば」と尋ねると鳥取砂丘しか思い浮かべない。まあ一番大きいのでそこを思い浮かべるのは仕方ないのだが、実際には県内には、北条砂丘と弓ヶ浜、というのもある。東部の人間ではそこまで意識がいかない。

西部の中心都市、米子は商都であったために、商業的には東部の鳥取よりも活気があるし、百貨店やデパートなどの店も鳥取より多い。こじゃれた店も多い。南に抜ける高速道路もある。しかし大阪から来るにしてはやや距離がある。どちらかといえば広島の方が近いかもしれない。

地理的に松江に近い、というのも経済的には有利だろう。そもそも方言についても、米子弁は出雲地方の言葉に近い。文化圏としてははっきりと松江寄りと言える。逆に松江に近いため、鳥取市への親近感よりも、松江への親近感の方が強かったりするようだ。

そういう西部なので、地味で経済的な活気がない東部のことをバカにしたりする人もいる。なぜ鳥取市が県庁所在地なのだ、米子の方が大きな町じゃないか、などと言う人も珍しくない。

一方で東部の中心都市、鳥取は政治都市としての色合いが強かった町だ。ゆえに、というのもおかしいのかもしれないが、経済的な活気はいまいち。保守的な地域だ。大阪、京都には比較的近いが、高速道路が一本も通ってないので、外へ出るには少し時間がかかる。鳥取市の人口は米子市より多い。それ以上に面積も大きいのだが。

文化圏としては、鳥取県中部から兵庫北西部あたりまでが共通した方言、習慣などを持つようだ。ただし周辺に他に大きな街がないので、経済的にかなり孤立してしまっている。それが経済的な不振の原因のひとつでもあるだろう。大阪までの高速道路が開通すればまた状況は少し変わるのかもしれないが、単に人が流出するだけになるかもしれない。

東部としては、県庁所在地であるというプライドのようなものを持って米子に対抗しているように思う。あと、日本最大の砂丘である鳥取砂丘とか・・・・・・。大きなデパートなどは西部に比べて圧倒的に少ない。文化の面でも、映画館の設備やコンサートの数などは西部に劣る。とはいえ、最近はこじゃれた店もいくつかできはじめている。うーん、こうやって書き上げてみると東部は長所が少ないなぁ。

ちなみに、倉吉を中心とする中部は、これまた東とも西とも少し違う独自の文化圏を作っているような感じ。ちょうど名古屋のようなものか。どちらにつくというわけでもなく、またどちらと仲が悪いということもなく、マイペースな感じ。

まあそんなこんなで仲のよろしくない東部と西部。同じ国内、同じ県内、方言は多少違うとはいえ同じ言葉を話す人々でさえこうやっていがみ合っているのだから、民族問題なんてのは本当に根が深いのだろうな、と思う。

私は東部の人間だが、個人としては米子の活気はうらやましいし、昔はよく米子まで遊びにいったりもしていた。でも東部ののんびりした雰囲気も嫌いじゃない。

ま、しょせん鳥取県なんて日本でいちばん小規模な県なんだから、どっちもどっち、目くそ鼻くその背比べじゃないか、とも思ったり。小さい県なんだから、もっと仲良くがんばっていけばいいじゃんね。