コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

妄想代理人


ようやく妄想代理人を最後まで見た。最終話直前で見るのをやめていたのだが、昨日ようやく、最終話までたどり着いた。

感想は・・・・・・うーん。最終回直前でかなり盛り上がってて期待してた分、最後のアレはちょっとどうかなぁと。どうやってこの大風呂敷に収集をつけるんだろうか、と思っていたのだが、けっきょく大風呂敷は膨らみに膨らんではじけた、って感じで収集はついていない。単純に見ていて個々の話は面白かったし、クオリティは高いと思うが、まとめきれなかったのでは、という印象は拭えない。

アニメとしてのクオリティは、さすがに今敏マッドハウスだけあってレベルが高かったと思う。しかし回によってかなり画風が違ったり、キャラの顔が違ったり、雰囲気が違ったりしたので、見ている方は戸惑ったり違和感を感じたりした。それも意図されてのことなのだろうが、できれば第一回の雰囲気で通して欲しかった。

音楽に関しては申し分なし。オープニングの「夢の島思念公園」サイコー。

以下ネタバレ注意。

妄想代理人(1) [DVD]
少年バットの正体は、力を持った妄想の暴走、である。それが現実の中に非現実を作り出し、その非現実が現実となって人を殺す。少年バットに殺されるのも、少年バットと戦うのも全て「妄想から生じた現実」だ。

こう考えてみた。少年バットの具現化はひとつの超能力。そう、言うなればジョジョのスタンドに近い能力なのではないだろうか。「行き詰まった者」「現実から逃げ出したいと思っている者」を自ら見つけ出し、そこに偽りの解放を与える自動追跡型のスタンド。そして人々の妄想が凝り固まることによってそのスタンドはさらに力を強める。そう考えれば、猪狩がいた「過去世界」も最後の大崩壊も説明がつく。

それでも納得いかない部分は残る。というか、エンターテインメントとしてあの終わり方はどうか、と。少なくとも現実世界を規定としてはじまった話なのだから、現実世界での解決を試みて欲しかった。

また全体として、中だるみだという感想は否めないだろう。自殺の話や噂の話、アニメ業界の話は、単発で見るならそれなりのクオリティは達成しているし面白いと思うが、全体の流れとは違うところの話のようで、本編と乖離している印象がある。

妄想代理人 (6) [DVD]
個々の人間については、「こういう壊れ方もある」という展示会のようで面白かった。現実逃避、いじめ、疑心、多重人格、犯罪、異常性欲、裏切り、痴呆、オタク、自殺願望、噂、浮浪者、回帰願望、老衰、妄想癖、仮想世界への没頭、無責任、誤魔化し、罪悪感、エトセトラエトセトラ。正しいと思っていたものもどこか微妙に壊れていて、壊れていたと思っていたものの中に正常な意識が残る。けっきょくのところ世の中に「完全に正しいものなどない」と言っているのだろうか。そのほころびに少年バットは入ってきて、命もろともぶち壊す。それは現実と向き合わなくなった人間への警鐘なのかもしれない。しかし猪狩の妻の警鐘の言葉は正しいようでいて、彼女もまた狂っていた。けっきょく今敏は、そういう説教臭いことを抜きで、単に「現状」を誇張して描いただけなのかもしれない。

ラストがちょっとアレだけど、一見の価値はあるアニメだと思う。

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