コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

「クロス・マネジ」3巻

クロス・マネジ 3 (ジャンプコミックス)
とても久々にジャンプコミックスを買った。雑誌はほぼ余すこと無く読んでいるのだが、それゆえにコミックスを買うことがなかった。デスノートやスケダンなど、気に入った漫画があっても単行本を買うということはなかった。

そんな禁を「クロス・マネジ」が破った。実に20年ぶりに、ジャンプ本誌のコミックスを買ってしまったのだ。

この漫画については「なぜ面白いと感じているのだろうか」とよく考える。

ラクロスというマイナースポーツを題材にした学園もの。主人公はプレイヤーではなく、女性ばかりの部に入ることになった男性マネージャー。ジャンプではよくあるハーレム系、かと思いきや、モテモテの空気は漂わせるものの、そういうベタベタコテコテではなく、どちらかというと正統派青春漫画。

ラクロスというマイナースポーツを題材にし、主人公が女子部のマネージャーというちょっと変わったシチュエーション。たがそれゆえに説明が多くなってしまったり、人物を描くパートに力を入れるあまり部活や試合のシーンが少なくなったりと、スロースターターな感じだった。しかしその分、各登場人物が深く個性を持って描かれている。ラクロス部メンバー12人に加え、友達や先輩、ラクロスショップの面々など、スポーツ漫画で新人マンガ家で、これだけの短期間でキャラの書き分け、個性付けができている作品も珍しいと思う。会話やギャグのテンポもいいし、若本の見透かすスキルや櫻井の耳を触る癖など、細やかな設定も、単に設定されているだけではなく話に生きていてうまい。

それに加えて個人的に好きなのは絵柄。作者はこの作品が連載デビューということで、巻数を追う毎に絵柄がどんどん上達している。もともとギャグ系の人だったようで、デフォルメキャラがよく出てくるのだが、そのデフォルメ感が心地いい。さらに3巻くらいから出てきた、陰影のないイラストチックな絵が、江口寿史を思わせる洗練された感じで、これまたよい。

この漫画の特徴としてもうひとつあげられるのが、間と表情による表現。感情を言葉だけでなく、間や表情で描く。沈黙の時の微妙な表情、言葉にできない気持ちや、その奥に秘められた想い。ギャグパートのデフォルメの絵とは対照的に、リアルに描かれた静かな表情がたくさんの事柄を物語っている。ジャンプでそういう漫画って、あまりなかったように思う。

いわゆる一般的ジャンプ漫画のような爆発力はないかもしれないが、しっかりじわじわと面白い、手元に置いておきたいと思える漫画だ。

3巻は特に見どころが多い。和峯の回は特にテンポが良くて、何回も読み返してしまった。小松、那智の回もよかった。普段脇役扱いのキャラが、はっとするような表情を見せる瞬間。そして個々人を書き込むことにより、さらに登場人物同士がうまく絡まって、物語が点から線、線から面へと広がっていく。

できれば長く続いて欲しいと思うのだけれど、ここのところ掲載順がラストから1、2番目なので心配。これだけ美味しいキャラを揃えた漫画、終わってしまうとしたらもったいないなぁ。

クロス・マネジ 1 (ジャンプコミックス)

クロス・マネジ 1 (ジャンプコミックス)

クロス・マネジ 2 (ジャンプコミックス)

クロス・マネジ 2 (ジャンプコミックス)

クロス・マネジ 3 (ジャンプコミックス)

クロス・マネジ 3 (ジャンプコミックス)