- 作者: 山下和美
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/07/21
- メディア: コミック
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相変わらず面白い。淡々と、しかし印象深く。
不思議な少年。人ならざる無限の時を生き、行き来する謎の少年。超常的な力を持ちながら万能ではない。未来に影響を与える力を持ちながらしかし自ら未来を作ることはできない。だから少年は人を蔑みなが人に惹かれ、それに触れて戸惑い、驚き、そして悲しむ。人の心は時に少年の想像を越える。だから少年は人を見限ることができず、蔑みながら慈しむ。少年は人の心に干渉しながら、人に心を干渉されている。人を惹きつけながら人に惹きつけられる。
なんてね。
以下ネタバレ。
今回は比較的優しい「少年」の話が多かったかな。1〜2巻の頃はもっと冷徹、もっとニヒルで刹那的で冷静で残酷で客観的だったような気がするが、その頃に比べたら格段に優しくなっているような気がする。
少年を研究する老人。ここで少年の存在についての謎にせまるのかと思いきや、「神などいない」と老人の仮定を全否定。老人の「人間を愚弄する存在」という言葉に対して、「僕は人間を愚弄するために存在するわけじゃない」という少年の言葉が切ない。そして最終的に老人を「救う」。死から救うのではなく、老人の真の願いを叶えて。少年らしい結末。
OLの話。窓の中の少年に思わず声をあげて笑ってしまった。OLがとても40歳に見えないのはご愛嬌。
駆け落ちの話。短いけれど印象的。不思議な少年に与えられた「生」。いままでの少年の中では一番優しい待遇なのではないだろうか。
独裁者の話。勇気を出した男の子の姿に驚く「少年」の表情が良いです。設定としては面白いけど、世界そのものが現実離れしすぎているし、オチも読めてしまったかな。
何も出来ないといわれた少年の人類への復讐、という話なんだろうけど、あれだけの「独裁者」になれたのであれば、それはある意味「何かを成し遂げた人間」と言えるのではないかと思うのだけれど。設定は好きだけど、そんなこんなで評価はちょっと微妙。
三人の男の子の話。この話に関しては少年のかかわりはかなり薄い。薄いのに強い。少年が「力」ではなく「言葉」だけで三人の男の子を結び付け、そして再び呼び集めた。一番最初の老人の話と同様、少年が「一言で誰かの人生に影響を与えた」という話。
やっぱ優しい話が多いね。