コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

僕と君の間に (3)

鈴木央氏のSFファンタジー漫画「僕と君の間に」が3巻にて完結した。

買って読む前は壮大な世界設定なのに3巻で終わるのは早かろう、と思ったりもしたのだが、実際に読んでみて納得。なるほど、これはここで完結すべき作品だったのだ。これ以上続かないからここで終わり、というわけではない。ここで終わることによって、この作品はきちんと完成したのだと感じた。一方でもっと読みたかったという気持ちもある。銀河鉄道999のように、もっといろんな町を巡ってトラブルに巻き込まれて、なんて感じでも良かったかなーと。でも下手に冗長にするのではなく、しっかりと描くべきことを描いてすっきりと終わる。これはこれで難しいことだと思う。

1、2巻はそこそこ面白いファンタジー漫画、くらいの認識だったが、3巻で化けた。怒涛の展開、そして1、2巻で張り巡らされた伏線が、恐ろしい勢いで収束しひとつの結末に繋がっていく。物語の端々に出てきたアレやコレが上手に結実していく様は驚きとカタルシスでいっぱいだ。

以前にも書いたが、この作品は鈴木央氏が書きたいものを書きたいがままに描いたものだと思った。だからこそ勢いがあるし、だからこそ強い余韻が残る。しかし単に趣味に走っただけのものではなく、ちゃんと作品としてしっかりとまとまっている。

どファンタジーだし、美形天才ショタとツンデレの権化のようなお姉さんの物語でアクは強いけど、私としてはじゅうぶんに楽しめた作品。


以下、ネタバレ含みます。エウレカセブンと絡めて書くため、そちらのネタバレも含むので注意。


敵がどう見ても鳥山明ですとか、ジャンプ張りに強さが数字で出てしまってますとか、どこからどう見てもマトリックスですとか、成長したホークの顔が変ですとか、突っ込みたいところもあるが、そういうところに突っ込むのがヤボだと思うくらいに話の作り方、まとめ方が上手い。プロローグとして描かれたセルマ、そしてホークとセルマが暮らしたヘブンの存在、アマゾネスたちの存在、ダリアとシルヴァンの存在、ダリアの記憶と兄弟。すべてに意味があり、ひとつに繋がっていた。

そしてラスト。ドラゴンボール張りのバトルからセルマとの決別、そしてエピローグ。短いながらも上手い。正直、序盤はホークにもダリアにも感情移入できなかったのだが、読み終わったときにはこの二人の物語をもっと見続けていたいと思った。


この物語を読み終え、いくつかの点で「交響詩篇エウレカセブン」との共通点があると感じた。まず「地球を離れ、そこへ戻ることを渇望する」という設定。中核にいる男女の物語であること。女性を主人公が救いにいくということ。最終的に激しくパワーアップして女性を助け出すというところ。などなど。

正直なところ、エウレカセブンの場合は見た後にあまり余韻が残らなかった。実際に最終回は結局1度しか見なかった。それに対して「君僕」の方には強い印象を感じた。1回読み終えてすぐ読み返したくらいに。この差はなんだろう。うまく説明できないが、エウレカの場合「引っ張りすぎた」というのがあったのではないだろうか。それが最後の緊張感をそいでしまったような。「僕君」は漫画としても短い3巻という中に物語を詰め込み、一気に読ませた。読者に考える隙をさえ与えないくらいに。結果としてエウレカは「やっと終わった」という感じ。最終回前にネタを出し切って息切れしてしまったというか。一方で「僕君」の方は怒涛の展開で、読み終わったときに「もう終わってしまった」という印象だった。

エウレカについてはまたいつかまとめて感想を書こうと思っているが、そんな感じでダブる部分があったので比較して考えてしまった。


最後に。この漫画、表紙でちょっと損してるよね、たぶん・・・。

僕と君の間に 1 (ヤングジャンプコミックス)

僕と君の間に 1 (ヤングジャンプコミックス)

僕と君の間に 2 (ヤングジャンプコミックス)

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