コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

キューブ2

CUBE2 キューブ 2 特別版 [DVD]

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マニアックなB級映画の傑作と言われた「キューブ」の続編。キューブが連なる正体不明の構造物に閉じ込められた人々は、脱出方法を探してさまよう。

ひとことで言ってしまえば、前作が売れたということで無理やり作られた2作目。2作目は駄作というセオリー通り、世間の評判は芳しくないようだ。前作に比べてキューブは進化し、見た目も小奇麗になった。しかし何かが足りない。前作には確かにあった緊張感や不安感が、今作ではほとんど感じられなくなってしまっているのだ。

媒体 テレビ
いつかもう一度見たい ×
劇場で見たい ×
最後まで集中して見れた 
他の人にも薦めたい ×
印象的なモノがあった ×
マニアック


まず舞台設定。前作はリアルなキューブ状の構造物が連なる巨大建築物という設定だったが、今作では正体不明の四次元キューブ。時空がねじれておかしなことになっている。さらにはパラレルワールドとリンクし、同じ人物が何人も一度に存在。個人的にはこういう超SF的な設定は嫌いではないのだが、いかんせんその設定を活かしきれていない。時空の歪みも単に複雑な迷路でしかなく、パラレルワールドもただ賑やかしで出てくる程度で、謎解きに絡むわけでもなければ伏線にもなっているわけでもない。そのあたりが残念だ。


人物について。登場人物は一新。前回同様、皆多少癖のありそうな人物たち。前回はてんでバラバラ接点の何もない人たちが突然意味不明の場所へ集められていたが、今回は皆が皆、ある共通点を持っている。しかしそれがよろしくない。前回は不条理さと理不尽さがより強い不安をかきたてた。またそれぞれが持つ「才能」が脱出の鍵となっていた。しかし今回集められた者たちは、制裁や口封じのために集められたことが明白になってしまっている。才能についても特に発揮されるわけではない。それぞれが謎を語る部分では「そうだったんかい!」という驚きはあるものの、前作のような「窮地を打開する快感」のようなものではない。

悪役についても、いかにも悪役然とした者が最後まで悪役だった。たとえばパラレルワールドから来た男が、ラリッて凶暴になっている自分自身をそれと知らず殺してしまう、などのようなエピソードが入っていれば、もう少しパラレルワールドの価値もあったのではないだろうか。


最後にトラップについて。前作では部屋に入るなりトラップが作動し「移動すること」自体に緊張感があった。しかし今回は、部屋でボーっとしていると何か正体不明の仕掛けが作動する、ということで、部屋移動に対する恐怖はない。トラップにしてもなんだかまったりもっさりで、逃げる余裕ありすぎ。

他にもあのエッチはいらんだろ、とか、食人もいらんだろ、とか突っ込みどころはいろいろある。

そしてラスト。あれはちょっと納得いかないなあ。確かにあの人物は、唯一「関連」が語られなかった。そして凶暴な男相手にけっこうしっかりと戦えていたので、イチモツありそうだなとは思っていたが。前作の切なくも希望が持てるラストと違い、今作のラストは非常に後味が悪い。最後に皆が立ち去った後のあの水の中から誰かがぬっと現れでもしてくれたら、余韻がかなり違っただろうに。


こんなに悪く書くつもりはなかったんだけど・・・なんだかけっきょく悪いところをあげつらっただけになってしまった・・・。どうしても前作と比べられてしまうのだが、前作がなければもっとわけのわからん映画だっただろうと思う。映画とは金をかけたCGや大仰で難解な設定によって面白くなるのではなく、一番大切なのは「見せ方」であると再確認させてくれた映画と言えるかもしれない。