- 作者: 山本英夫
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/08/30
- メディア: コミック
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前巻の感想でも書いたが、最初の頃の「人の心が姿として見える」というインパクトは強かったのに対し、この記号女編になってから勢いが止まってしまったような気がする。私が作者について行けていないだけなのかもしれないが。
相変わらずコマが大きくてあっという間に読み終えてしまう。登場人物も以前に比べて極めて少なく、かといって登場している数少ない人物が深く掘り下げられているわけでもない。なんだろう。心を覗いているはずなのに、見えてこない。この少女の今は描かれていても、過去や未来がまったく描かれていないからだろうか。もちろんあの車内での状況で彼女の過去や未来は関係ないのかもしれない。しかし記号化を打ち破るにはやはり過去を見て、そして未来へと繋げる何かを描いて欲しかった。血を流し、そこから記号化が解ける。それは生きているという証なのかもしれないが、単なる自傷によるナルシズムともとれる。彼女は本当に記号から開放されたのか。彼女は本当に自分自身にたどり着けたのか。いや「自分自身」というのも所詮はひとつの記号でしかないのではないか。では彼女は一体何から解放されどこへ辿り着いたのか。私にはそこまで読み至ることができなかった。
後半は主人公の過去へと迫る話。流れからいってこの巻で最週巻なのかしらんと疑ったほどだが、まだ続くようだ。ようやく話が動き出した感じだが、あいかわらず台詞は少ない。多ければいいってものでもないけど。まだ会社は辞めてなかった様子だが、辞表を出し自らに区切りをつける。何故長期休暇を取ったのか、そのあたりは次巻で明らかにされていくのだろう。
しかし男は解放されているようで、反面、解放した人々の記号化を自ら背負い込んでいく。少女は血で浄化されたが、男は浄化されないようだ。
ぶっちゃけちょっと惰性で読んでる感じになってきた。次巻では濃い内容での巻き返しを期待。