20世紀少年 19―本格科学冒険漫画 (小学館プラスワン・コミックシリーズ)
- 作者: 浦沢直樹
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/06
- メディア: コミック
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今回の主役は矢吹丈。ほぼ全編矢吹丈のお話。矢吹丈って言うのも変か。まあ、「彼」のお話。
以下ネタバレぽろぽろ。
ぶっちゃけケンヂ復活。どうやらこの15年間、記憶を失って放浪していたらしい。やがて記憶を取り戻し、逃げ出したこと、大虐殺の恐怖、それらに苦悩し最終的に悟る。「悪になるのは大変だ。正義の味方になる方がよっぽど楽だ」。そうかもしれない。悪は純粋に生粋の悪でもない限り、常に自分の中の善の心と戦わねばならない。常に敵が内と外にいるのだ。しかし正義は、たとえそれが思い込みであったとしても敵は常に外にいる。
今回、「砦の総統」はその苦悩せざるを得ない悪を選んでしまった一人。己の冒した罪を誤魔化すためにさらなる悪に手を染めてきた。それをケンヂにあっさりと見抜かれてしまう。アンチヒーローとしてはあまりにあっさりと打ち負かされてしまって少々拍子抜けだが。いや、アンチヒーローが弱すぎというよりも、ケンヂの肝が据わりすぎ。一度絶望し、死を覚悟した上で正義の道を選んだケンヂだからこそ、この強さを手に入れられた、のかな。
ただ、今回ケンヂがあまりにもカリスマ化されていてちょっと不安になった。ケンヂなら何でもできる、という考え方は、「ともだち」賛美と同じ類のものと言えなくもない。もちろん、ケンヂの目的も心意気もともだちとは違うが、カリスマを持ち上げて信望する側の心理は同じだ。ヒーロー漫画として主人公がカリスマ化するのは当たり前のことなんだが、この漫画にはともだちという負のカリスマの存在があるゆえに、カリスマ賛美に微妙な抵抗を覚える。考えすぎかな。
しかしケンヂのカリスマ化に至る描写は確かに上手い。読者にまでも「ケンヂがいればなんとかなる」「ケンヂの歌は何かを変える」と思わせてしまう。ただ変な歌を歌う平凡なにーちゃん(今はおっちゃんか)だったのに、何の力もないはずなのに、なぜにこうまで強い存在に見えるのだろう。浦沢直樹の描き方が上手いんだろうなあ。
ともだち、について。「砦の総統」が若い頃ともだちに会ったとき「この前と同じの人?」みたいなことを言っていたのが気になる。以前からともだちは複数人いた?? 顔に包帯を巻いた姿は撃ち殺されて以後の装束かと思っていたが、以前からあの姿にはなっていて、時に中の人が入れ替わっていた?
今のともだちは、車で爆発炎上して死亡したことになっている「彼」だと思っているが、他にもなにかトリックがあるのかな。
余談。ちょっと値段が高いなあ、人気漫画だから単価上げてるのかなぁ、なんて思ってたら、なんだか変なCDがついてた。T-REXだそうで。まだ聞いてない。
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