コトバノウタカタ

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意識のバックアップ + 人工知能サイト

22日の英紙オブザーバーに語ったもので、ピアソン氏は「われわれは大真面目でそれが実現可能だと考えている。現実味のある数字を挙げれば、2050年には人の意識をコンピューターにダウンロードすることができるだろう。となれば、人間にとって死はもはや大きな問題ではなくなる」と断言した。

via: id:SnowSwallow:20050525:1116961553


人間の記憶や意識を転送したりバックアップしたり、というのはSFでは当然のように出てくる設定だ。最近のもので言えば攻殻機動隊などがメジャーどころだろう。こういう話には夢があるし、興味もある。しかし現実的に考えた場合、「意識や記憶の保存」「他者との思考の伝送」について私は懐疑的だ。両者は似て非なるもので、ごっちゃにして話すと発散してしまうので今回は「意識や記憶の保存」についてのみ。


いまだに人間の「考える仕組み」「記憶する仕組み」というものははっきりとは解明されていない。その解明されていないものをただ取り出したり、読み込んだりするだけで記憶や意識が移動できるとはとても思えない。もちろん、「45年後にはそれも解明されているであろう」という期待を持つことはできる。しかし現状の研究成果から言えば、その可能性はまだ見えないと思うのだが。

そもそも、「人間の神経や脳は電気信号で情報伝達をしている」という言い草からして半分は間違いだ。確かに電気的な刺激を使ってはいるが、神経は電気と言うよりはむしろ、化学的に刺激を伝えていると言った方が良い。シナプス間もそうだし、神経1本の中でも「電気的刺激」→「イオン弁が開く」→「イオンが流れ出す」→「隣の弁に電気刺激」というような経緯で電気が伝わっていく*1。ただ電気が流れているだけの単純なコンピュータとは根本的に構造が違う。それに言うまでもなく脳や神経は「並列システム」だ。現在のノイマン型コンピュータのような直列型ではどう頑張っても脳の代用はできまい。並列型のコンピュータも研究はされているが、人間の脳に対応できるような実用化の目処はまだついていないようだし。

それに、記憶や意識、というのは「動的な情報」である。HDDにデータを溜め込むような「静的な情報」ではない。もちろんその楚となる、ある程度固定化されたネットワークはある。しかし「保持しているだけで意味のある」コンピュータのバックアップデータと違い、脳の情報は「情報が流れることによって意味が生じる」ものだ。これを「バックアップする」というのはどうにも想像できない。

とはいえ、40年前には今のようなコンピュータ社会、ネットワーク社会などほとんど予想されていなかった。あるいは本当にその頃には電脳社会が実現しているかもしれない。リアルに考えれば「無理なんじゃね?」とは思いながら、一方では是非実現して欲しいと思っている。

ピアソン氏はまた、コンピューターの飛躍的な進歩のあり方からすれば、2020年までには「意識」を持ったコンピューターの開発が可能になると指摘。意識のあるコンピューターには感情も生まれると予想した。同氏は感情を持ったコンピューターの応用例として、航空機制御プログラムへの導入を提唱。「墜落を前にしたコンピューター制御プログラムは恐怖を覚え、何としてでも墜落を回避しようと全力を挙げるだろう」と語った。

これもねえ。是非にも作って欲しいとは思うんだけど、実際のところ何を持って「意識」と言っているのかが曖昧。エキスパートシステムの延長線上にあるものなのか、それともまったく別のシステムになるのか。「できるだろう」って言うのは簡単だけど、もう少し具体的な話をして欲しい。

それと「恐怖によって危険を回避しようとする」というのは非常に危険性を孕んでいると思うのだが。むしろ「どんな状況であれ、冷静に客観的に最適な解を導き出す」ことこそがコンピュータに求められる「思考」なのではないかと。


余談だが、人工知能という話つながりでこれを。質問に答えていくことにより、人工知能が人の考えているものを当てるというもの。ニューロかエキスパートシステムか知らないけど、けっこう的中する。面白いっすよ。

*1:専門でもなんでもないので事実誤認あったらごめんなさい。って今日の日記はこればっかり言ってるな。