コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

ゲーム脳再注目

最近またゲーム脳やらゲーム脳脳やらが話題になっているようだ。尼崎の列車事故について、ZAKZAK森昭雄氏のコメントを掲載したことが理由らしい。件の記事はこちら*1

ゲーム脳の恐怖」の著書で知られる森昭雄・日大教授(脳神経科学)は高見運転士の行動をこう分析する。


 「高見運転士は過去3回も乗務員として重大なミスを犯しながら、自身で再発防止ができておらず、注意力が散漫な印象を受ける。伊丹駅でのオーバーラン後、指令の呼び出しに応答がなかったのも、故意であるとすれば、大事な場面で倫理的な行動がとれず、キレやすいというのはゲーム脳の特徴とよく似ているともいえる。JR西日本は運転士に関する情報を開示するなど、徹底検証が必要ではないか」

よりにもよってなぜ森氏にコメント求めるのか。この人に聞けば「重大な犯罪や事故はゲーム脳のせい」って言うに決まってるじゃんか。ZAKZAKは面白がって煽っているとしか思えない。ひどく不謹慎だ。


ところで、この森のおっさんの「なんでもゲーム脳のせいにしてしまう」ことを、誰かしら「ゲーム脳脳」と名づけたようだ。この名前、いまいち好きになれない。揶揄というのはわかるのだが、森氏と同じレベルで言葉遊びをしているようで、なんとも。


で、ゲーム脳に関する日記を追いかけていたら、興味深い日記を見つけた。


   まるち〜ズ 開発日記 ゲーム脳に直撃!


森氏の公演を聴きに行った人がその内容を綴っているものだ。スタンスとしては私のように完全アンチではなく、比較的中立の立場から聞いているもよう。その中に箇条書きにしてある公演内容の中から、印象的なものをいくつか抜粋。

  • 生放送の電話相談テレビに出た時、1〜8歳までゲームをして育った自分の子供がゲームをするたびに泡を噴くという相談があった→ゲーム脳が原因

いやそれ何か別のことが原因なんじゃないですか? そういう例が何例あったのか、ゲーム脳と判定された子供にどのくらいの確立で発生するのか、また何をもって因果関係があると断定したのかが気になるところ。

  • ある学校で講演した時「自分はゲームの世界では女の子とデートできるけど、現実ではできないのでどうしたらいいか?」という質問を受けてビックリした→ゲーム脳により羞恥心がなくなってる→仕方ないので自分のフラれた話をした

以前は「現実とゲームの区別ができていない」と言っていたらしいが、「ゲームの世界では」「現実では」と言っているのだからその区分けは明確にできているということ。だから「羞恥心がなくなってきている」に変えたのだろうか。

真剣に悩んでる子供に対して、こういう態度でしかも「仕方ないので自分のフラれた話をした」ってねえ。振られた話をした、のくだりにはちょっとウケたけど。

  • 人間の頭の良さは60%が遺伝で、残り40%が環境によって決まる

まあ通説と言えば通説だけど、学者が証明もなくこういうことを明言してしまっていいものなのでしょうか。

  • 育ち方が悪ければ、インドのオオカミ少女のように動物みたいに成長し、戻れなくなる

インドのオオカミ少女は、人里に帰ってきてから瞬く間に言葉を覚えていったんじゃなかったっけ? まあオオカミ少女の逸話自体真偽が怪しいって話だからなんとも。そういうあやふやなものを例に出すと、怪しさが余計に増す。

  • ゲーム脳の人間は、笑ったりといった感情を表に出さなかったり、集中できなかったり、キレやすかったり、約束を100%守らない

公演で100%って言ってしまったのならかなり問題ありじゃないですか? 本当にひとつも約束を守らない人間なんて、この世にいるのだろうか。

  • 小さい頃からゲームばかりしていた女子学生がいたが、約束を全く守らなかった→その事を聞いたら、約束の存在自体忘れていた→典型的なゲーム脳

ゲーム脳は痴呆と同じで、すぐ直前のことも忘れてしまう、なーんて言っているが、シミュレーションなどの複雑なゲームやるときは、記憶力と判断力フル活用しないととてもではないけどお話にならないのだが。

  • ゲームを多くやるある生徒は、お尻を半分出したりチャラチャラしたものを沢山つけるといった変なファッションをしていた→これもゲーム脳のせい

「お尻を半分出したり」に笑った。ああいう人たちって普段街に出てるから、他の人に比べてゲームやってる時間少ないんじゃないかと思うんだけど。

  • 頭に1番良い遊びはお手玉である

出た! お手玉。お手玉がいいというのであれば、ゲーム脳について例示したのと同様に、9時間ぶっ続けでやらせて脳波測ってみてください。どんな結果が出るか楽しみです。

  • テトリスはソ連で開発された軍事用ゲームで、人間性を殺して殺人マシーンにするため兵士にさせていた

これまた出た! こんなこと言われて、テトリスの版権持ってる会社は文句を言わないのだろうか。ちなみに実際にはこういうことのようです。

1987年にソ連の科学アカデミー・コンピュータセンターで開発されたパズルゲーム。開発者アレクセイ・パジトノフ


開発目的はゲーム用途ではなく人間の処理能力を研究するためでありアメリカの数学者ソロモン・W・ゴロという人物が考案したペントノミというパズルゲームを下敷きにしている。ところがいざためしてみると本来の目的を忘れて研究者がハマり、やがてモスクワ中がテトリスの虜になりやがて商社を通じて西欧社会に浸透していった。

  • 産まれて8ヶ月間、ずっとテレビ見させていたら笑わない子供になった

それはテレビのせいではなく、親が子の相手をしなかったから、でしょうに。因果関係が間違っている。

  • メールのやりすぎは危険→今「メール脳の恐怖」という本を執筆中

また荒稼ぎするつもりですか? でも携帯業界は、ゲーム業界よりも手ごわいと思いますよ。

  • 韓国で81時間ゲームをやりつづけた子供が死んだ→ゲーム脳のせいで歯止めが利かなくなっていた

そりゃ死ぬでしょ。勉強だってマスターベーションだってヒンズースクワットだっておてだまだって、81時間もやってれば死んでもおかしくない。だいたい、なぜ親は止めなかったのだろうか。そういうことは疑問視しないんですかね。


あーなんかもっと小粋な突っ込み入れたいけど、なかなか難しいものですね。

他にも興味深い日記があったのだが、長くなったのでまた後日。

関連サイト

*1:この記事、言及数が200近い。やっぱすごい反響だわ。