コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

いまさらゲーム脳

ゲーム脳の恐怖 (生活人新書)
いまだに身近に「ゲーム脳」なるものを信じている人がいてびっくり。ゲームが脳に影響を与えるか否かは別にしても、「ゲーム脳」なる概念とそれを発表したこの本はトンデモ認定されている類のもの。といっても、私自身はこの本を読んではいないのだが、ちょっと調べればそのトンでもさを指摘した記事がザクザクと出てくる。

以前にも書いたが、マスコミはとにかくゲームを悪者にしたがる。その先駆けとなったのがこの「ゲーム脳」理論だ。以下、Amazonのレビューからの抜粋。

テレビゲームは、子どもの心や体をだめにするのでは?と心配しているお母さん、お父さん。そう、あなたの心配は的中です。このまま放っておいては大変なことになります!
脳神経科学者の著者が、目に見えるデータとして、テレビゲーム中の脳の状態をとらえました。テレビゲームをしているときには、驚くほど、脳−−前頭前野の機能が落ち、恐ろしいことに、やがてゲームをしていないときにも、働きが悪くなっていきます。


ほら、マスコミがウホウホいって飛びつきたくなるような内容でしょ。しかしこの本、脳科学的にも間違いだらけ、素人が読んでも矛盾だらけ、という話だ*1

脳波に関する知識の間違いについては、以下の斎藤環氏のインタビューで詳しく指摘されている。


   


他にも以下のサイトが参考になるだろう。


   


間違いと、それに対する指摘をいくつか上げてみる。まとめすぎて判りにくいか・・・。詳しくはインタビュー本文を読んでください。

アルファ波は痴呆の脳波、異常な脳波
誰でも出る正常な脳波、むしろリラックスしていることを示す。アルファ波を徐波と呼ぶことはない。なぜ本当に異常なシータ波やデルタ波については一切言及していないのか。
ゲームをするとベータ波が減りアルファ波が増える
そんなものは目を開閉するだけで変わる。
シールドなしで脳波を測定できる簡易脳波測定機を開発
そんなものは以前からもっと安い価格で売られている。
脳波の測定方法
電極を付ける位置が明らかにおかしい。しっかり実験したいならなぜシールドされた部屋でやらないのか。またこの測定方法では前頭葉しか検査できない。
簡易脳波測定機
価格が不当に高い。アルファ波とベータ波だけ測っても意味がない。
脳について
運動を司る小脳についての言及がない。
反射神経について
いわゆる反射でも大脳は使うし、一般的に反射神経と言った場合には、大脳や小脳を経由した複雑な反応のことを示す。
子供の犯罪率が増加している
実際には減少している。

インタビュー中で特に気になったのは、この本は「EMS-2000」という簡易脳波測定機のプロモーションとして書かれたのではないか、という話。脳波測定機としては玩具以下のこの商品を使って、ゲーム脳理論を展開しているという。メディアやマスコミを利用し、恐怖心を煽って、目的をまともに果たすこともできない脳波測定機を法外な値段で売る。それでは悪徳商法そのものではないか。

また出版社の罪も否定できない。商品の紹介文やキャッチで、「ゲームは危険、いますぐゲームをやめよう」というようなことが書かれている。この本の内容が嘘っぱちであれば、それを出版する出版社にも罪がないとは言えまい。またそれを煽り立てたマスコミも同罪だ。出版は日本放送出版協会か・・・。出版+マスコミではないか。もしかして意図的に都合のいい嘘の流布を狙ってる?


ゲームが脳に何らかの悪影響を与える可能性があるということを完全否定はしない。しかしだからといって嘘やいい加減なことを並べてゲームを糾弾し、恐怖心を煽り、問題の要因として槍玉に挙げるというのは我慢ならない。またその影で利益を得ている者がいるというのも腹が立つ。ゲームと脳の関係について研究するのならもっと真剣に、まともに、冷静かつ客観的にお願いしたい。少なくとも研究と銘打つのであれば、脳波とゲームについて人並みに知ってからやって欲しいものである。

関連サイト

*1:なんども言うが読んでないので伝聞。ちゃんと批判できるように一度読んでみようかな。金出して読むの嫌だから図書館かどこかで探そうかな。