コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

牛丼復活は未だ来ずともよい

ちょっと激しい勢いで書いてるかもしれないが、風邪のせいだと思ってください。


私は牛丼が好きだ。安くて美味い牛丼ならなおさらだ。そして吉野家の牛丼はそこそこうまかったと思っている。

しかし、アメリカ牛の早期輸入解禁には断固反対だ。


昨日、吉野家が一日だけ牛丼を復活させたらしい。NHKまでがそのことをニュースに取り上げていた。私も牛丼好きなので、牛丼を食いたいという気持ちは私もよくわかる。しかしだからといって、牛丼を食いたいがために、個々人の嗜好のためだけに、人体や畜産業への害を無視して輸入の早期再開をしてしまってもいいものだろうか。


日本でBSEが発生したとき、アメリカはアメリカ産の牛肉は安全だと言ってきた。そして皆がそれを信用してきた。そしてアメリカは日本でBSEが発生してから先、牛肉はおろか、牛由来の成分を使った食品、医療品、化粧品などの輸入をすべて禁止している。現在全日本では頭検査が導入され、すべての牛について検査をしてもなお、アメリカはその輸入禁止を解いていない。

そんな中、今度はアメリカで狂牛病が発生した。アメリカは「その牛はカナダ生まれだ」などとわけのわからないことを言っているが、その牛がアメリカで育てられていたことは確かなのだし、それが輸出されるとしたらアメリカから輸出されるのだ。それにアメリカの「カナダ生まれ」という証言の信憑性もけっきょく有耶無耶だ。アメリカはけっきょく、その牛についてまともに追跡や証明ができなかった。

そもそもアメリカは、今の日本の全頭検査と違い、危険があると思われる牛に対しての抽出検査しか行ってこなかった。その割合、実に0.1%。乱暴な言い方をすれば、アメリカで1匹のBSE感染牛が見つかれば、潜在的に1000頭のBSE牛がいるという計算になる。しかもアメリカは、牛についての情報管理などほとんどしておらず、そのBSE牛と同じ経路で入ってきた牛を半分ほどしか追跡できなかったようだ。

その後、アメリカは「もう大丈夫、管理も徹底し、危険部位もきちんと除去している」と豪語していた。しかし実際には、日本に輸出された牛肉から危険部位が検出されている。危険部位を取り除いた食肉処理のために最新の機械が導入されたというのだが、本当のところはかなり杜撰なやり方で食肉処理がされていた、とアメリカ国内でも告発されていた。日本への輸出肉から危険部位が検出されたのはこれを裏付ける結果と言えるだろう。

その後、アメリカは検査方法などを見直すと公言。検査率をなんと0.2%にアップさせるという話だった。


こんなアメリカ産の肉を輸入禁止にするのは当然の措置と言えるのではないだろうか。過敏だといわれるかもしれないが、BSEの感染ルートなどはまだ完全には解明されておらず、またクロイツフェルト・ヤコブ病(人の狂牛病)の致死率は100%。一度発症したらなすすべもなく必ず死ぬ病なのだ。

問題は人への感染だけではない。そういう畜産などの病気に関しては、発生国からは、その最後の発生から7年間は輸入を行わない、という国際的な常識があるという。だからアメリカが日本からの牛由来製品の輸入を禁じたことに文句を言うつもりはない。それは真っ当な処置だ。しかしアメリカは、自分の国で問題が発生したら、手のひらを返したかのように、輸入の早期再開を求める、などと言ってくる。これはあまりにもダブルスタンダード過ぎる。そういう態度に腹が立つ。


私も牛丼は食いたい。しかし上記の理由で、アメリカ肉の輸入再開は断固反対。安易に「牛丼が食いたいから輸入再開を希望する」なんて言ってる人を見ると無責任にも程があると思う。もしそのことで将来国内に多量のヤコブ病患者が発生したら、その者たちは責任をとれるのか? けっきょくは「日本政府の対応」を批判するだけなのではないのか。

今でも牛丼が食いたければ食える。吉野家以外で牛丼を出している店もあるし、一部の吉野家では値段は高いが、ずっと牛丼を出し続けている店舗もある。オーストラリア牛でも和牛でも使えばいい。日本の牛肉はいまや世界で最も安全と言われている。それを使えばいい。値段が高くなるのはいたしかたあるまい。それが「安全の価格」なのだから。

マックのハンバーガーの値段も高くなったわけだし、牛丼の価格が少々高くなったとしても、そんなに気にすることもないのではとも思うし。


極論を言えば、ここでアメリカ牛輸入再開は、ミドリ十字が起こした非加熱製剤のHIV感染と同じ問題をはらんでいると思う。一部の人間の嗜好や利益のために、未知の脅威を許容することはできない。

また、ここでアメリカ牛の輸入再開を許してしまえば、通商上のダブルスタンダードをアメリカに許してしまうことになる。そんなものは他にもたくさんあるのだが、今目立っている牛肉についてそれを許してしまえば、アメリカはきっとますます日本に不利な条件でのルールを押し付けて来ることだろう。牛丼ごときでそんなことになってもいいのか?

アメリカが十分信用に足りるだけの管理体勢を敷けるまでは、焦らず輸入禁止を続けることが必要なのではないだろうか。