コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

雪が積もれば思い出す


鬱な思い出。思い出すだけでも申し訳なさと後悔でイーッとなる。ちょっとネガな話だが、昔話だし、思い出すと気分が暗くなるというよりは、自分のバカさ加減に呆れるような話なのでこっちに書くことにする。


大学生の頃。通常、構内には自動車での乗り入れは禁止されているのだが、早朝と夜は裏門が開放されていて、そこからこっそり出入りできていた。メンドクサガリの私は、駐車場を借りることもせずたいてい学内か路上に駐車して過ごしていた。

その日は大雪だった。雪が多いだけではなく、かなり気温が低く、粉雪が重く降り積もっていた。上の雪の重さで下の雪が固められ、すべりやすくなっていた。新雪の上を歩いていても滑って転びそうになるくらいだった。

それでも家に帰らねばなるまい。夕方、もう日も暮れた頃、私は車に乗って裏門へと向かった。この裏門、非常に狭く車が1台通るのがやっとの広さ。しかもそれなりに角度のある坂になっていて、風が真っ直ぐに通り抜ける道でもあった。吹雪の中車を進めていくと、その坂の途中からハンドル操作がきかなくなってしまった。右に切っても左に切っても車体が言うことをきかない。雪と風で路面がつるつるになっていたのだ。しかも下り坂。ブレーキも当然きかない。車はつるつる滑りながら、45度くらいの角度で、脇に積みあがった雪に突っ込んでしまった。

バックに入れてアクセルを踏んでみるが、タイヤは空回りするばかり。人が歩いても動けないくらいのつるつる雪である。スノータイヤをはいているとはいえ、小さなタイヤの2輪駆動の軽自動車ではどうにもならない感じだった。

途方にくれていると、前方から別の車がやってきた。乗っていたのは若い女性だった。私がにっちもさっちもいかなくなっているのを見るや、その女性は車を降り、自分の車の足元のシートを引っぺがし、吹雪の中で私のタイヤの下に差し込んでくれた。

バックギアに入れ、ゆっくりとアクセルを踏む。タイヤがその敷物を噛んで、車がどうにか動いた。だが路面は相変わらずつるつる。そこは下り坂。そのまま私の車は真っ直ぐ下へと降りていく。ブレーキをかけるとまたスピンしそうで怖いし、けっきょく私はそのまま裏門を出てしまった。裏門を出たところで車を停めてお礼を言おうかとも思ったが、雪でいっぱいの道路には車を停めておくスペースもなかった。けっきょく私はそのままどうしていいかもわからず、走り去ってしまった・・・。


突然のことだったので、その女性がどんな人だったのかも全然覚えていない。ただ、ものすごく機転がきき、そして行動力のある親切な人だということだけはわかった。通り過ぎるとき必死に頭はさげたが、けっきょくまともなお礼は一言も言えなかった。無理をしてでもあそこで停まってしっかりとお礼を言うべきだった。私の車の下敷きになった車の敷物はきっとべちょべちょに塗れて酷い有様になっていただろう。その女性本人も吹雪の中で雪塗れになっていた。そうまでして窮地を救ってくれた人にお礼も言えないなんて・・・。そう思い返すと本当に自分がバカでアホでどうしようもないと思えてしまう。

雪が積もれば思い出す、鬱な思い出・・・。もしこれ読んでたら菓子折りくらい持って行くのでコメントください。