コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

ハーフライフ2 - クリア後インプレッション


出張前の話になるが、「ハーフライフ2」をクリアした。どたばたしていてゆっくり感想を書く暇もなかったが、宿での夜がひまひまなのでぼちぼち書いてみることにする。


まず総評。良かった。文句なしの出来。開発がかなり送れたり、物理エンジンの是非が取りざたされたり、「名作の続編は駄作」との危惧があったりで心配していたが、そんな不安はなんのその。グラフィックもゲーム性もすばらしい仕上がりだった。粗を探せばないわけではないが、全体で見れば想像以上の良い出来。素直に楽しかった。

しかも、ハーフライフ2はこれで終わりではない。製品版のマップだけでなく、ハーフライフにはMOD*1やカスタムマップという無限の可能性がある。既にSDK*2が公開されていて、MODコンテストの告示もされている。

これで六千円台なら決して高くない。


では詳細な感想を。激しくネタバレ含むので注意。



難易度について
まず難易度について。前作に比べ多少難しくなっている。前作の敵は基本的に位置が固定されており、それを物陰からこっそり覗きながら撃ち殺せば、相手が行動に移る前に殲滅できていた。今作の敵も一部は同じように位置固定だが、多くの場合はこちらに向かってわらわらと現れてくるので、物陰からこっそり作戦が使えない。また、前作は半分以上がエイリアンだったが、今作は基本的に人間相手のため、敵が飛び道具を使ってくる。銃器だけでなく、爆破系の攻撃も多用してくるので、一気に大ダメージを食らうということもある。そのあたりで難易度が上がっているように思う。

しかし難しすぎるということはなく、ノーマルくらいなら、少々難しい場面でも何度か挑戦し、少しだけ頭を使えばてクリアできるレベルだろう。腕に自身がない人は「こまめにセーブ」をお薦めする。ただし、体力が減ったり弾薬が尽きそうなときはセーブしないように。変なタイミングでセーブしてしまうとにっちもさっちも行かなくなってしまうので。


謎解きについて
謎解きについては、前作よりはわかりやすくなっていたように思う。「どちらに進めばいいのかわからない」状態になることはあったが、それでも何十分も行き詰まるということはなかった。前作で慣れているから、というのもあるだろうが、マップの作り方や誘導の仕方がうまいということも大きいだろう。

いくつか、物理エンジンを活用した謎解きがあった。しかしせっかくの物理エンジンなんだから、もっとトリッキーな謎解きがあってもよかったように思う。例えば・・・

  • パチンコの台の中のようにピンがたくさん並んだ壁があり、そこに上からドラム缶を落とせるようになっている。ドラム缶を落とし、うまい具合に真中のエリアに落ちたら道が開ける
  • グラビティガンでドラム缶を飛ばし、向こうのビルにあるバスケットに入れることができたら武器庫への扉が開く
  • 強化ガラスの向こうの床にスイッチがあり、ガラスは下が30センチほど相手いる。ブロックを床に向けて投げてすべりこませ、そのスイッチを押せたらガラスが開く
  • クレーンを使った巨大ボーリング

など。ここまでするとリアリティがなさすぎて興ざめしてしまうだろうか。私の例はともかく、しかしそういう「物理運動による不確定性」や「物理エンジンならではの謎解き」がもっとあれば、ハーフライフ2らしさをより強調できたのではないだろうか。


ストーリーについて
ストーリーについては、相変わらず「会話のみ」で情勢と状況の説明をすべてこなしている。前作の知識がないと多分ほとんど意味がわからないだろうとは思うが、ストーリーがよくわからなくてもゲームは進められるのでその点は心配いらない。

前作では単に「ちょっと顔の知れた研究者のひとり」だったゴードン・フリーマンが、今回はレジスタンスにとっての無敵の英雄になっている。どこに行っても「ゴードン・フリーマン!」とみんなが驚いてくれるのがなんだかちょっと嬉しい。フリーマンが文字通り「自由をもたらす男」とみなされている。

また今作では、サブキャラにも顔や性格が付き、ストーリーに深みが増している。とはいえミッションが、世界を救うというよりも、捕らえられたイーライをあっちこっち追いかけているだけになってしまっているような気もするが。

今回はずっと「人間が敵」ということで、舞台は広がっているが、物語としては前作に比べるとスケールが小さくなっているような気がする。とはいえ、抑圧された世界の住人たちが解放に向けて立ち上がるというシチュエーションは燃える。しかもリーダーはバーニィだし。だが圧倒的に不利な戦い。戦闘機やストライダ*3が溢れ、耐えることなく敵が襲ってくる街で戦っていると、ときどき本当に「こんな戦い勝てるのか?」と絶望的な気分になったりもした。その分、クリアしたときの開放感もひとしおと言えよう。


グラフィック
前作からものすごく進化しているグラフィックス。しかもそれほど重くない。綺麗なだけのゲームは最近よく見かけるが、その上に軽いという点は素晴らしい。水の表現、火の表現、遠景など基本的に文句なし。

ただし、最後の塔に入ってからがちょっと気になる。塔内はともかく、最後に登っていくエレベータから見た遠景がひどい。それまでの緻密さがすべて台無しになるほどの汚い1枚絵。あれはもう少しどうにかならなかったのだろうか。最後の最後で作りこむ気力がなくなってしまったのか。

もうひとつ、今回の目玉としてあげられている人の表現。確かに前作のポリゴン1枚の顔に比べればかなり進化している。表情も目の動きも口の動きもそれなりにリアル。しかし、「サイレントヒル3」に比べてしまうとどうしても見劣りしてしまう。肌の質感や表情の自然さなどは「サイレントヒル3」の方が数段上だ。PS2であれだけの表現ができたのだから、PCならもっと上の表現ができたのではないかと思う。これはシステムではなく、デザインの問題なのかもしれないが。


物理エンジンによるリアリティ
今回、物理エンジンの導入のおかげで、世界の臨場感が大きく高まっている。まず触れられるものが増えた。物に触れられるかどうかは物理エンジンだけで決まるものではないが、物理エンジンを導入することにより、作り手側がより簡単に、そしてより多くのオブジェクトに触れることを許すことができるようになった。

そして、それらを触れたときのリアリティ。それがゲームの本質を変えているかどうかは意見の分かれるところだとは思うが、私はそれらにリアルに触れられるというだけで十分楽しかったし、ある種のハーフライフ2の新しい「感覚」を作り出していると感じた。無駄にブランコに飛び乗ってみたり、箱を重ねて崩してみたり、テーブルの上に物を乗せてテーブルだけ飛ばしてみたり、長い板を持ってきて普段登れないようなところに登ってみたり。物理エンジンの導入により、自由度が増し、いままでできなかったそういう「くだらないこと」ができるようになった。

またその自由さは、きっと将来のMOD作りにも生かされていくことだろう。いままでFPSとしてしか使えなかったハーフライフだが、ハーフライフ2ではレースゲームやスポーツゲームにまでその可能性の範囲を広げている。


サポートキャラ:市民
前作でも警備員がサポートキャラとして付いてくれたが、今回は数パターンのサポートキャラが登場する。

まず「市民」。これは前作の警備兵と同様、銃器で戦闘を援護してくれるキャラだ。前作よりかなり利口になっており、強い武器が落ちていれば拾うし、弾切れになったら物陰に隠れてリロードするし、敵を発見すると声をあげて教えてくれる。また衛生兵がいれば仲間や自分の体力が減ったときに回復してくれたりもする。最大4人の市民が味方としてぞろぞろとついて来てくれる。死なないようにうまく引き連れて行けばかなり有効な戦力になってくれる。ただしスナイパーやストライダーが出てくるとほぼ確実に死んでしまうので、いつまでも未練たらしく連れて歩こうと考えない方がよいかも。飽くまでもサポートキャラだから。


サポートキャラ:アントライオン
序盤はウザい敵だが、フェロモン袋を入手すると味方として主人公の命令に従うようになる。フェロモン袋を投げて攻撃目標を指定すると、自らの命も顧みずどんどん突撃していく。おとりにもなるし、周辺に敵がいれば勝手に襲い掛かってどんどん倒してくれる。アントライオンを呼び出せるエリアでは、自分はほとんど戦わなくてもいいくらい。戦闘したがりには物足りないかもしれないが、自分のために命を投げうって戦ってくれるアントライオンがけなげで可愛く思えてくる。


サポートキャラ:タレット*4
通常は敵キャラのタレットだが、ノバ・プロスペクト内で敵の猛攻に対して、タレットを配備して応戦するという場面がある。敵として出てくるとウザいタレットだが、味方となるとかなり頼もしい。倒されてしまうと機能停止してしまうが、絶対に壊れない。倒れてもまた立て直せば動き出す。倒れにくいように配置しておけば、何もしなくても敵をばったばったとやっつけてくれる。二度目にタレットを使う場面はかなりシビアな戦闘になると思われるので、タレットの特性をよく考えて有効に活用することが必須となるだろう。こいつも使っているとなんだか可愛く思えてくる。


難点1:強化グラビティガン
最後のタワーに入ってからがイマイチ。全ての武器を取り上げられ、グラビティガンだけが残される。そのグラビティガンがなぜかパワーアップ。敵を引き寄せられるようになり、引き寄せるだけで殺し、その死体をを別の敵にぶつけるとその敵が消滅。グラビティガンで直接撃っても敵を一撃で倒せる。そしてグラビティガンで敵を倒すと、その敵が持っていた武器はすべて消滅する。つまり、塔以降はグラビティガン以外の武器が使えなくなる。

これが強すぎで、戦略性もくそもない。それまでの残弾に恐々としながらも適切な武器を選んで戦ってきた醍醐味がまるでなし。強すぎの上にワンパターン。最後の塔はそんなに長いマップではないので、そんなに致命的な問題ではないが。

ゲームにはこういうことがときどきある。最後の最後でそれまでのゲーム性をまったく無視した仕様になる。「パルテナの鏡」の最終面が横スクロールシューティングになったり、「デビル・メイ・クライ」のラスボスがガンシューティングになったり。なんでそうなってしまうんだろうか。最後に「スペシャル」を盛り込もうという気持ちはわからないではないが、そうすることによってそれまでのやり方を全否定してしまっては意味がない。


難点2:ラスボス
ラスボスが、ボスといえないくらいにあっけない。ハーフライフのMODの「BLUE SHIFT」ではラスボスの存在さえなかったのでそれよりはマシと言えばましだが、それにしてもあっけない。無駄に強いボスはいらないし、何回も復活するボスじゃなくてもいい。しかし前作のラスボスくらい「ラスボス然」とした存在は欲しかった。


エンディング
またかよ!という感じのGマン落ちエンディング。しかしまあそんなものだろう。こういう終わらせ方をしておけば、MODや拡張パックへも繋げやすいし。Gマンは絶対的な権力を持っているように見えるが、しょせんは中間管理職の立場でしかないんだろうな。その上の存在ってどんなものなのだろうか。世界中のコロニーを牛耳っていた博士よりも力を持った存在・・・。それならわざわざゴードンが命張って開放に行く必要なんてないじゃん、と思ったりもするのだがそれではゲームにならんか。


あー、こんなこと書いてたらゲームやりたくなってきた。今夜は鳥取に帰れるから久々にできるぞー。

*1:あるゲームをベースにカスタマイズしたゲームを作ること。既にCounter-Strike:SourceDay of Defeat:Sourceなどの、旧作の人気MODの移植版MODが公開されている。

*2:開発環境のこと。これを使ってMODやカスタムマップを作る。

*3:四足歩行の戦車。スターウォーズのスカイウォーカーみたいなやつ。

*4:自動式固定銃座のこと。正面に敵が近づくと勝手に攻撃をはじめる。