コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

揺蕩う(たゆたう)


今回は柔らかい語感の言葉について。和語というのは全体的に柔らかい印象がある。古文は苦手だが、古文的な動詞は特に柔らかい語が多く、その響きは良い。ということで今回は柔らかい語感の和語の動詞について。語感だけでなく、字も良いものをいくつか集めてみた。語感と字が良いという話なのであまり書けることもないのだが。


揺蕩う(たゆたう)*」。ゆらゆらと揺れてただようこと、あるいは人の心が揺れて定まらないこと。穏やかに揺れる様をよく表現した語だ。
「蕩」という字はあまり見かけないが、「蕩ける*」と書いて「とろける」と読む。また「蕩く*」と書けば「とらく」と読むらしい。この両者、少し意味が異なる。前者は「柔らかくなる」というような意味だが、後者は「ばらばらになる、形が崩れる」という意味になるようだ。またどちらも心の表現として使われるところも興味深い。


彷徨う(さまよう)*」。当てもなくふらふらと歩き回ること。「彷徨*」と書いて「ほうこう」とも読むが、「さまよう」の方がやはり語感が良い。


躊躇う(ためらう)*」。思い切りが付かない様子。言うまでもないが、「躊躇*」で「ちゅうちょ」と読む。


棚引く(たなびく)*」。煙や霞などが横に長く引くような形で空に伸びる様子。字面としては少々面白みに欠けるが、なんとなく頭に強く残っている言葉。
「棚」は接頭語ということ。同様に「棚」を使った後には「棚霧る(たなぎる)*、「棚曇る(たなぐもる)*」などがあるようだ。