ネットをうろうろしていてたまたま見つけた人形作家、瀬川明子。人形作家といえばまず天野可淡が思い浮かぶが、瀬川明子はその天野可淡とはまた違う味わいの人形を作っている。天野可淡が魂をこめた、更に言えばある類の呪(しゅ)を込めた人形を作っていたのに対し、瀬川明子の人形は「造形的な美」を求めて作られたように感じる。といっても軽いというわけでは決してない。奇抜で多彩な人形たちは見ていて心地よい。
面白いのは、瀬川明子の人形には統一性があまりないということだ。この人は実に様々なタイプの人形を作っている。まず顔立ち。優しい顔、厳しい顔、恐ろしい顔、変な顔、リアルな顔、デフォルメされた顔、多種多様の顔がある。それどころではないようだ。旧来の雛人形のような物から球体関節人形、お土産用の人形のようなものまである。
ネットの画像越しだから確かなことはいえないが、素材に関しても様々なものを使っているように見える。造形やポーズに関しても様々で、そういう多彩なものを駆使して、作品のバリエーションの幅が恐ろしく広くなっている。
ファンタジーとグロテスク、構図、ポーズ、演出された造形美、多彩なキャラクターという点で見ると、人形作家と比較するよりもむしろ加藤龍勇&後藤啓介のイラスト世界に近いかもしれない。その辺りが私のツボを突いたのかもしれない。
しかし、人形作家はやはり女性の方が凄い。男にはない念がこもりでもするのだろうか。一度、実物を見てみたいものである。