コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

シュールレアリスムな画家 #2

追記:以下にあげる芸術家の一部はシュールレアリストとは言えないとのご指摘を頂いた。ので「変な絵を描く画家」くらいのニュアンスで読んでいただきたい。また、シュールレアリスムに関する記述はまったくデタラメということなので、読み流してほしい。


懲りずにまた続きを書いてみる。あまり引き出しは多くないので、こんな書き方をしているとあっというまに弾が尽きてしまいそうだが。


サルバドール・ダリSalvador Dali
Dali, Salvador 2005 Calendar
Dali (Taschen 2005 Calendars)
Salvador Dali 2003 Calendar


いまさら書くこともないとは思うが、シュールレアリスムの権化とも言える画家。歪んだ時計を描いた「記憶の固執(The Persistence of Memory)」(左側・画像)はあまりにも有名。でもこの絵はあまりに頻繁に目にしてきたので少々見飽きた感がある。この絵や「焼いたベーコンのある柔らかい自画像(Soft Self-portrait with Grilled Bacon)」(画像)のせいで、ダリというと「歪んだ」とか「曲線的な」というイメージが強いように思う。実際に私の中でもそういう印象だ。しかし実際には実に様々なタイプの絵を描いている。個人的には「聖アントニウスの誘惑(The Temptation of St. Anthony)」(中央・画像)や「Archaeological Reminiscence of Millet's Angelus」(右側・画像)などが好み。
しかしよくもこれだけ数多くの妄想を思い描けるものだと思う。私も妄想は苦手ではないが、こういう「具象の抽象的羅列」はやろうと思ってもなかなか難しい。どうしても現実に捕らわれてしまうのだ。素直に尊敬するとともに、その絵に感銘を受ける。しかしダリには、いままであげた画家のような狂気や退廃感を感じない。作品によってはグロいものやヤバいものもあるが、彼の主要な作品からはそういう狂った臭いがあまりしない。見慣れた、ということもあるだろうが、それだけではなさそうだ。彼の作品は突拍子もないとはいえ、夢の中において秩序ある一場面となっているから、だろうか。

絵画で有名なダリだが、彫刻も手がけている。なかなか本物の美術品に触れる機会のない私だが、一度ダリの彫刻展を見に行ったことがある。もちろん彫刻もシュールレアリスム満開なのだが、絵と違って色彩がないので非常に落ち着いた印象だった。しかもダリの世界を立体的に見られるというのは面白い経験だった。


The Fantastic Art of Beksinski (Masters of Fantastic Art)
ベクシンスキー (A TREVILLE BOOK)
ベクシンスキー (Zdzislaw Beksinski
いままであげた画家の中では、おそらく一番マイナーで一番若い。巨大な廃墟のような建造物(画像)を描いたり、骸骨のような人(画像)を描いてみたりと、退廃的な雰囲気と埃っぽさのただよう絵を描く。この人の描く絵は、「BLAME!」の世界のような臭いを感じる。茶色に汚れ、崩れゆく建造物は生命の介在を拒否しているようなたたずまいを見せる。そして人物は常にグロテスクに、人ならざるもののように描かれる。それでいて有機物までもが、まるで無機質であるかのような描き方をする。けっして明るい絵ではないが、その迫力と緻密さ、そして発想力には目を見張るものがある。*1


Museums of the Mind: Magritte`s Labyrinth and Other Essays in the Arts
Magritte
Magritte
ルネ・マグリット (Rene Magritte)
ダリと並ぶ典型的なシュールレアリスムの重鎮。ダリよりもすっきりあっさりとした絵なので、世間の受けも比較的よいようだ。城が建つ巨大な岩が宙に浮いている「ピレネーの城
(Castle in the Pyrenees)」(左側・画像)などをよく見かける。また、彼は人物像に顔を描かないことが多く、「人の子(The Son of Man)」(中央・画像)などはその典型だ。顔を描かないことにより何かを表現しているのか、あるいは顔を描くのが苦手なのか。しかし顔がない方が確かに神秘性が増し、それがまた彼の作品のひとつの特徴となっているのだから、彼の目論みはどうあれ成功していると言えるだろう。
絵もさることながら、絵につけられたタイトルが時に突拍子もなくて、タイトルを見てから絵を見ると違った含蓄を感じられるという、絵としてはちょっとズルいともとれるようなこともやっている。足だけの絵に「赤いモデル(The Red Model)」(画像)と名づけたり、部屋の中の巨大な薔薇に「レスラーの墓」(画像)と名づけたり。そういうところが小憎たらしくて良い。
ダリ以上に退廃感がなく、彼の絵は夢というよりは空想や幻想に近いと感じる。空や雲、鳥などがよく描かれているからだろうか。色使いも明るい。ドロドロとしてものが多いシュールレアリスムの中で、マグリットの作品の空々しいまでの静謐さは貴重なものだろう。


つづく?

*1:ベクシンスキーのファーストネームの読み方がわからない。