コトバノウタカタ

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攻殻機動隊比較

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 [DVD]

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一昨日の夜にBSでやっていたので、思わず通して見てしまった。もう何度も何度も見ているのだが、改めて見てもやはり面白い。絵は最近のデジタルバリバリのアニメに比べると古っぽくも見えるが、テンポが良く、動きも良い。そして押井特有の暗さと小難しさが前面に押し出された良作だ。そんなことはいまさら言うことでもないか。ということで内容については割愛。今回は、今回見たなりに感じたことを少し。

以前見たときと一番違うのは、「Stand Alone Complex(以後S.A.C)」と見比べてしまうという点。同じモノをベースにしているとはいえ、細かいところではいろいろと違う。間違い探しではないが、違う点、同じ点はどこだろう、というちょっと俗っぽい見方をしてしまった。

まず声優。荒巻以外はだいたい同じなので、違和感がなかった。あの頃から山ちゃんが声優としてトグサをやってたんだなぁと不思議な感慨を感じた。

「S.A.C」と最も違う点は草薙素子の存在だろう。「S.A.C」では強靭な意志を持った絶対的な人間として描かれている。ある意味、荒巻などよりもしっかりとして迷いがない。一方で「GHOST IN THE SHELL(以後G.I.S)」では、己のゴーストの実在を疑い、個の定義さえできず迷っている人物として描かれている。空ろではかなく、ある種の「死」への渇望を常に持っているような存在。そして最終的には己の個を消すという選択を選ぶ。「S.A.C」の素子であれば、絶対にそんな選択はしないだろう。

中身だけではなく、見た目としても素子はかなり印象が違う。「G.I.S」の素子は、瞬きをせず、表情も乏しい人形然として描かれている。それはその内面の映し鏡でもある。一方で「S.A.C」の素子の顔は普通だ。あまり特徴もなく比較的印象も薄い。「G.I.S」に比べてキャラの存在感さえ薄いような気もする。「S.A.C」ではむしろ、トグサやバトーの方が目立っているような気さえする。そういう意味では、「S.A.C」の素子はあまり成功しているとは言えないのかもしれない。S.A.Cの素子は「完璧すぎる」のだろう。どこかにほころびがあった方がキャラとして立つ、という例なのかもしれない。

ひとつだけ。どうでもいい部分だが、違和感を感じたところがあった。それはトグサが素子に対してタメ口をきいているところ。S.A.Cではトグサは少佐(素子)に対して常に敬語なので、そこはちょっとなんだか違うなぁと思った。同じである必要はないんだけど。


しかしこうやって「G.I.S」を見返してみると、「イノセンス」はやっぱテンポ悪かったんだなぁと思う。「G.I.S」はとんとん拍子で話が進み、ほとんどダルさがない。一部、素子が海に潜ったり、船に乗ってゆっくりと進んで行くシーンは冗長とも思えるが、しかしあれも「素子の内面の不安や葛藤の表現」としてみれば意味はあるのだ。一方で「イノセンス」の長々とした祭シーンは本当に意味がない。

イノセンス」も嫌いではないが、やはり「G.I.S」は越えられなかったと言わざるを得ないだろう。