コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

加藤洋之&後藤啓介の表紙

ハーフウインド ハーフクリスタル―風晶
たまには本の話でも。

加藤洋之(現・加藤龍勇)&後藤啓介(以後、カトゴト)というイラストレーターがいる。かつてはよくファンタジー系の小説などの表紙を手がけていた。有名なところでは「オーラバトラー戦記」などがある。現在はコンビを解消し、それぞれで活動を行っているらしい。高校生のころ、ファンタジー系の小説を読むことが多く、自然と彼等の描いた絵に出合うことも多かった。

そのうちに彼等自身にも興味を持つようになり、いくつかイラスト集を買うほどになった。ミュシャのような穏やかで流麗な線、ビアズリーのようなありえない造形やデザイン性。しかしトゲトゲしくはなく、どこまでも柔らかい。ある者は彼等の描く絵を「男から見た女性像であり、違和感を感じる」と評した。確かにそういう側面はある。しかし彼等のその絵が、私の描く落書の根底となり、そしてやがてビアズリークリムトへ導いてくれたというのも確かだった。

なぜか、彼等が表紙を書いた小説は印象の強いものが多い。もう十年以上前のことなのに、そのいくつかをおぼろげながらに覚えている。ということで、その頃のぼんやりとした記憶を頼りにいくつかの本をあげてみる。


ゆらぎの森のシエラasin:4257764481
森に住むげてもの食いの奇妙な少女と騎士様との話。内容についてはほとんど覚えていないくせに、最後の方でシエラが成長したときの描写の「膝の裏までも綺麗だった」というフレーズが今でも頭に残っている。表紙は、森に佇む成長したシエラの姿だったと思う。カトゴトにしては比較的普通の絵。

いまAmazonを見たら、価格462円なのに、中古で初版が1,800円になっている。こんなマイナーな小説でも、初版であればこんなに価値が出るものなの? それとも私が思っているほどマイナーではないのかな?


英雄ラファシ伝asin:4103785012
日本ファンタジーノベル大賞の第2回の優秀賞受作品。ファンタジーというよりは童話に近い。長い長いスケールの大きな童話。空飛ぶ花やクジラなど、世界観がカトゴトの描く絵そのままな感じで、ものすごくぴったりときていた。表紙はパステル調の星とクジラ、だったかな。

こっちの初版中古はヤケ有りで360円也。


ねこたまasin:4829123834
上記2つに比べると、コテコテのどファンタジー。富士見ファンタジア文庫だし。細かい話は忘れたが、ネコマタみたいな女の子と騎士みたいな男のコンビが出てきたような話だったと記憶している。確か続編もあって、それも読んだ。「まさかな」だったかな。

どファンタジーといっても、それほど灰汁は強くない。むしろ富士見ファンタジアにしては文学っぽく表現している良作だと思う。当時はかなり気に入って、この作者の作品が出るたびに買って読んでいたものだ。表紙はネコマタぽい女の子が機械的な森の中にいるような感じ、だったと思う。上記2つに比べて、線や色がくっきりと描かれていたような記憶がある。


ろくに内容も覚えていないのに紹介をしてしまう自分が怖い。カトゴト自身のイラスト集、漫画についてもまたいずれ。