コトバノウタカタ

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ルパン三世 ルパン vs 複製人間

ルパン三世 ルパン vs 複製人間 [DVD]
もう何回も何回も見てきたので今日はあまり真面目に見てないのだが、ちょい見をしながら、こりゃすげーな、と再認識した。絵や動きはテレビアニメ並みのクオリティで、マモーがしゃべってる間顔の色が変わったりと、大丈夫かこりゃ、な感じもあった。しかし絵面やストーリーが抜け飛んでいる。というかぶっ飛んでいる。

キリコやダリなどのシュールレアリスムの絵の中を走ってみたり、最後には巨大脳みそがロケットに乗って宇宙へ飛んでいったりするのである。何度も見慣れているからいまさら驚きはしないが、これが初見だったら度肝を抜かれていることだろう。しかも数多くのアニメや漫画が満ち溢れた今ならともかく、まだアニメにシュールなどの概念がほとんどなかった当時にあの設定や場面を考えたというのは凄い。

さらにはこの物語にはいくつかのテーマも込められている。処刑されたルパン。そして再び登場するルパンだが、己がクローンなのか本物なのかわからない。そういう不安定なものがずっと根底に敷かれている。当のルパンはまるで気にはしていないようだが、見ている側は「クローンと本物」というテーゼをずっと突きつけらた状態なのだ。


ただしこのルパン、テレビ版でのタブーを犯している。それは「殺人」だ。相手はクローン人間とはいえ、マモーを1度ならず殺している。アニメ版では殺さずで通していたので、その点だけはいささか気に食わない。まあ殺さずになったのは赤ジャケットからで、緑ジャケットの頃は平気で殺してしまっているんだが。


しかしこのルパンのクオリティが高い一方で、テレビ版が終わってからたまに流されるスペシャル版のクオリティの低さが辛い。スペシャル版、映画版は、マモーとカリオストロ以外まともに見れたものではない、と思うのは私だけだろうか。クリカンがどうとか、そういうレベルではない。話が面白くないし、ルパン一味がルパン一味らしくない。絵も変。新しいスペシャルが放映されるたびに、一縷の望みを託して見てしまうのだが、たいてい砂を噛むような時間を過ごさねばならない羽目になる。それとも、過去のルパンに幻想を見すぎているのだろうか。


まあしかし、脳みそは何百年経っても大きくなったりしませんよ、とか、レーザーを刃物では跳ね返せませんよ、とか、クローンはともかく記憶の転移はどうやってんですか、とか、脳みそあるなら脳みそからクローン作れば劣化マモーできないじゃん、とか、核ミサイルぶっ壊して放射能大丈夫か、とか、突っ込みどころは満載だ。でもルパンだし。突っ込むだけ野暮、ってのはずるいかな。