コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

映像と鏡


また「きのこ祭」のネタなのだが、ローカルなケーブルテレビを見ていたら、先日のきのこ祭の模様が放送されていた。その中になんと我が一家の後ろ姿が映っていた。我々がきのこを巡っている最中に何度かテレビカメラを見かけたので、たぶん放映されるだろうな、と思ってはいたが、まさか自分たちが映っているとは・・・。そういうのは苦手なので、なるべく映らないような位置にいたつもりだったのだが・・・不覚・・・。

私はそもそもビデオやら写真やらに写されるのがものすごく苦手だ。苦手というより、嫌いだ。写されることというよりも、それを他人に見られたり、自分で見たりすることが酷く嫌だ。気持ち悪いというか、怖いというか、とにかく不快な感じがしてしまう。おそらず自らの容姿に対する劣等感がその理由なのだろう。映像や写真は、その己の姿を客観的に目の当たりにさせられる。他人から見ればリアルな私も映像の私もそう変わりはしないのだろうが、映像化された私はより醜いように感じてしまう。特に動画に対する嫌悪は酷い。背が低くて、スタイルも悪い、姿勢も良くない、ヒゲが濃くて眉毛も濃い自分を像として記録されている。考えただけでもぞっとする。


同様に、私は鏡が嫌いだ。朝顔を洗うときに見る鏡などはそうでもないが、お店などのディスプレイで掲げてあるものや、試着室の鏡などで自分の姿を見るのがものすごく嫌だ。特に全身が映るものなどはダメで、目をそらし、避けて通ってしまうほどだ。軽い鏡像恐怖症と言ってもいいかもしれない。

そうやって自分の姿を見ることを避け、客観的に自分を見つめることをしないから自分を良くしていくこともできないのだ、と指摘されればそうだと答えるしかないが、苦手なものは苦手なのだ。もう何十年も苦手だと思っているものを、考えの切り替えだけで取り除けるものでもあるまい。

そういう劣等感の強さは、裏を返せば「自意識過剰」の現れだと思う。人に注目もされていないのに人の視線が気になる。そして自らに自信がないからその見られることを恐れる。鏡というのはその「見られている自分」の象徴なのだろう。鏡を見ることによって、見られている自分をより強く自覚する。それが恐怖感となって襲い掛かってくるのではないかと思う。


しかし何故それほどまでに自分の姿が嫌なのだろうか。いくつか過去にその要因を思いつきはする。ひとつは高校時代に撮った写真で、格好つけたつもりで撮られていたらすごく怖い顔で写っていた。それ以来写真に写されるのがなんとなく苦手だ。

さらに遡ると、小学校時代にもひとつトラウマらしきものがある。学芸会の発表でカラスの役をやったのだが、本番の数日前に風邪で学校を休んでしまった。その休んだ日に、少しカラスの動きに変更があったようなのだが、学校を休んでいた私にはそれが知らされていなかった。最初の段取りでは、発表の最後のシーンでハシゴに登っていたカラスが、下に降りてステージを駆け回りながら幕を閉じる、という話だった。しかし実際の演目の際には、私以外のカラスはハシゴの上に留まったままカーカーと鳴いていた。私一人が、ハシゴを降りてステージを駆け回ろうとしていたのだ。戸惑った私はわけもわからず、泣きながらハシゴの下でカーカーと鳴いていた。その様子をビデオ撮影されていた。後に皆でそのビデオを見たのだが、やはり私だけがハシゴを降りて、泣きながらカーカーと鳴いていた。ビデオを見ることにより、失敗の辛さを追体験させられてしまったのだ。

本当にそれらがトラウマなのかどうかわからない。あるいはこれ以外の覚えてもいない出来事にトラウマの原因があるのかも知れないが、ともかく写真や映像には、そのように嫌な思い出しかない。


その劣等感と自意識の強さは、人付き合いの下手さや人見知りにも結びついていると思う。人の評価が怖い、ということは、そのまま「人が怖い」ということに繋がっている。以前に女性が怖いという話を書いたが、そのあたりにもこの劣等感は直結しているだろう。

それでも、年を取るにつれてその劣等感も和らいできたような気がする。否、和らいできたというよりは「どうでもよくなってきた」と言った方がいいのかもしれない。自意識過剰で自信がなさ過ぎるのも問題なのだが、体面を気にしなくなってしまうというのもやはり問題があるだろう。かといって人見知りが解消されるということもない。むしろ「人とかかわりたくない」という意識が強くなってきているようにさえ思う。「枯れてきている」という言葉が最もしっくりくるのかもしれない。

こんなことではよくないと思いつつ、新たな人と接する機会のほとんどない仕事と日常を過ごしているゆえに、初対面の人への耐性を見につける術もない。もっとバランスの取れた「自意識」を身に付けられれば、などと、ありもしない別の現実を想像してみたりもして。