コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

言葉の順序

とある場所で以下のような質問を見つけた。

  • 優しいけど、酒飲みだ
  • 酒飲みだけど、優しい

この二つを比べた場合、どちらが好印象ですか?

多くの人は後者を選ぶだろう。しかし実際には、どちらも言っている内容はほとんど同じなのだ。言っていることはほとんど一緒でも語順だけでほぼ逆の印象になってしまう。言葉とは簡単そうで難しい。

こういう例は日常生活でもたくさんある。例えば・・・、

  • 君は成果を出せないでいるけど、頑張っている
  • 君は頑張っているけど、成果を出せないでいる

前者は相手を褒めるための言葉だ。いまは成果を出せないでいるが、このまま頑張りたまえ、という意味にとれる。成果を出せないでいることを責めているわけではなく、頑張っていることを評価しているように受け止められる。

対して後者は、ネガティブな言葉になっている。頑張ってはいるがそれが成果に結びついていない。つまり今の頑張り方ではダメだ、あるいは頑張っても君には無理だ、というようなニュアンスを感じる。頑張っていることさえ無意味だ、と切り捨て、成果を出せないことを非難しているような口ぶりだ。

語順だけで、文章の意味だけでなく、単語のニュアンスまで変わってしまうのだ。


人と話をするときなどはこの語順の力を特に意識せねばなるまい。この反意の表現は、相手を持ち上げて落とす、あるいは落としてから持ち上げる、という手法であり、結論を強調する効果がある。だからこそ、誰かを褒めるとき、しかるとき、語順を間違えては逆効果になってしまいかねない。

言葉とは面白いけれど難しい。否、難しいけれど面白いものである。