コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG 05

攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG 05 [DVD]
本編の感想に入る前に、オープニングの感想。前作「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」のときは、オープニングは変な3Dアニメーションでかなりしょぼかったのだが、2nd GIGのオープニングはしっかりアニメで、音楽とも綺麗にシンクロしていて、見ていて非常に心地よい。素子の顔が本編より微妙に幼い感じで違和感があるが、それでも素子とわかるからよしとしよう。微妙に「個別の11人」や今回の黒幕に関わるカットなどが挿入されていて、回が進むに連れてその面白みが増す。


では本編の感想。以下ネタバレあるので注意。


今回はどちらの話も面白かった。AI「GODA」との会話と、裁判モノ。どちらも「会話」をメインに持ってきた話。特に「GODA」との会話は、攻殻機動隊らしい小難しい会話満載で、見ていてぞくぞくした。やはり攻殻はこうでなくっちゃ。話してる内容は半分くらいしか理解できなかったけど。


第9話 「絶望という名の希望 AMBIVALENCE」
難民の連続自爆テロを追うバトーたちの話と、AI「GODA」に潜入した素子の話との2つが並列進行する。

この回は、「個別の11人」事件のターニングポイントともなる重要な回と言えよう。素子と「GODA」との会話は難解だが、今回の事件の全容を示唆するような告白が数多く含まれていた。これでようやく、個別の11人の存在意義や目的が明確になり、公安9課は敵を特定するに至った。まだ先は長いのでやや早いネタバレのような気もするが、敵がわかりながら手を出せないというジレンマな状況が長く続くということだろうか。それはちょっと辛い。

先にも述べたように、今回は攻殻らしい難解な会話が多かった。聞いていて半分ほどしかまともに理解できなかったが、理解できないまでもそういう雰囲気が好きだ。わからないのに好きというのもミーハーな感じがするが、好きなものは好きなので仕方がない。それに「イノセンス」ほど難解でもない。なんとなく背景は理解できたような気がするし。

今回は作画のレベルも高かったように思う。難を言うとすれば、素子の仮想空間バージョンの顔と衣装はちょっとどうかと思うが。あれってS.A.C 1stのチャットのときのキャラだよね? 正直ちょっとかっこ悪いが、あるいは素子はそのかっこ悪さを演出しているのかもしれない、と善意に取ってみる。

自爆テロがらみの話の方も緊張感があってよかった。ただし、バトーの「まだ時間がある」という考えはちょっと甘すぎ。だんだん時間間隔が長くなっているといっても、互いに連絡を取っているとは限らず、最後のひとりになってしまったから早く自爆しなければ、と追い込まれる可能性だってあるんじゃないかと思った。

あとは今回のシリーズ全体を通して、難民の悲壮感があまり出てないような気がするんだよね。いままで何度か難民は出てきているが、自爆テロするほど追い詰められている様子が見えない。もっと追い込まれていることを表現するようなエピソードなり設定なりを挿入した方がリアリティが出るのではないかなぁ。

苦言は出るものの、見ていて楽しかった。こういう理屈っぽい回がたまに挿入され、それがちゃんと筋にからんでいるのが攻殻の面白いところだと思う。

しかしけっきょくAI「GODA」とゴウダとの位置付けがよくわからなかった。2つは別人格のようだったが、リアルのゴウダを元に作り上げたのがAI「GODA」? もう一回見て確認する必要があるかな。


第10話 「イカレルオトコ TRIAL」
裁判もの。非番中に追いかけられていた女性を救うために銃を発砲してしまったトグサ。けっきょく追われていた女性は殺されてしまい、トグサは犯人の裁判の証人となるために拘留されてしまう。相手方についたのは、黒を白としてしまうような如何わしいヤリ手弁護士。トグサは証人として出頭しながら、まるで犯人のようにその発砲行為を糾弾されはじめる。

こういう話も好き。特に「正義」という概念がからんでくる裁判ものは私好みだ。というわけで、この回もそこそこ面白かった。が、いかんせん気になったのは「敏腕弁護士」のしょぼさ。あのくらいだったら私でもねじ伏せられるのではないかというほど誘導がヘタクソ。トグサが「熱い男」でなければ、軽く流されて終わってしまうような粗末な尋問のような気がした。そもそも「〜と考えられる」とか「〜と思われる」とか、推測が多すぎ。そんないい加減な「感想」で裁判を進められるわけない。だいたい、トグサが撃ったことと犯人の殺人はほとんど無関係。検察もそこを指摘しろよ。

トグサが撃ったことにより腕が暴走した、とでも言うつもりだったのだろうが、銃を持って人を追いかけ、警察の静止も無視し、撃たれてもなお「痛覚は切ってある」と反抗してきている。これだけで充分「殺意の立証」はできるはず。これで「殺すつもりはなかった」が通るなら、どんな殺人事件の殺意だって否定できる。

逆に言えば、トグサの応対がひどくじれったかった。今回は朴訥というよりも愚鈍に見えて仕方がなかった。素子の支援がなければどうなっていたことか。

マテバについては「実際に試射などを繰り返した結果、私にはこの銃が最適だと判断をした」と言えばすむこと。テロリストを撃つのはためらい、銃を持った今回の犯人を撃ったことは、「テロリストは爆弾を持っており、下手に刺激をすると自爆を促してしまう可能性が高く発砲できなかった。一方、銃を持った犯人の場合、銃を撃つ腕さえ無力化させれば惨劇は避けられると判断した」くらい言えばいい。だいたい、9課の仕事に関しては「事件に関することは国家機密なのですが、ここで話してもよいでしょうか」くらいの確認しろよ。

とはいえ実際の裁判なんか見たことないので本当のところはわからないんだけど。

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