コトバノウタカタ

よしなしごとをつらつらとつづるばしょ。

ビアズリー

昨日はクリムトのことを書いたので、今日は私的お気に入り画家のもうひとつの巨頭、オーブリー・ビアズリー

イギリスの挿絵画家。時代はクリムトより少し前の19世紀末。いわゆるデカダンスと呼ばれる19世紀末退廃芸術の一翼を担った。同じくデカダンスの作家、オスカー・ワイルドの「サロメ」の挿絵が一番有名なところだろう。

挿絵画家なので、線画の絵ばかりだ。絵というよりはイラストに近い。初期の「アーサー王の死」の挿絵は比較的普通だったが、「サロメ」あたりになってくると、退廃的、エロティック、グロテスクなものになってくる。醜いけれど、美しい、一度見たら脳裏に焼き付いてしまうような強烈な絵だ。

ただ強烈なだけではない。この人の絵の場合、その線の流れとデザイン性が見ていて非常に心地よい。また衣や背景の紋様が繊細かつ流麗。うまく言い表せないが、とにかく絶妙。ちなみにクリムトでもそうだったが、この紋様には日本の絵画が影響を与えているらしい。

少し昔話をしよう。はじめてビアズリーの絵を見たのは、岩波文庫の「サロメ」を読んだときだった。当時学生だった私は、授業でオスカー・ワイルドを扱っていたということもあり、興味本位でたまたまそのサロメを手にとって読んでみた。そのときは物語の強烈さにばかり気をとられていて、挿絵に対してはあまり思い入れを感じていなかった。

数年後、東京に就職試験の面接に行った折に、たまたま百貨店でビアズリー展をやっていた。いちおう知ってる名前だ、と思って見に行ったわけだが、そこでハマった。元々挿絵なので原画も大部分は白黒、サイズも大きくはない。しかし間近に見る本物は私のツボをばっちりと突いていた。

当時、私は落書レベルだが、奇妙な絵を書いていた。その根源をようなものをビアズリーの絵の中に見た。当時私が影響を受けていたイラストレーターの元をたどっていくと、おそらくビアズリーに行き着くのだろう、と勝手に思い込んでしまえるほど、その絵は私の中にしっくりと収まったような気がした。なんて言うとちょっと大げさだが、そんな感じでビアズリーは私のお気に入りに追加された。

しかしビアズリーは25歳の若さで亡くなっているため、作品があまり多くはない。もっと長生きしていれば、もっとたくさんの作品を見れたかもしれない、と思うと少し残念だ。

最近は落書も描いてないなあ。またビアズリーの画集でも見てやる気を出そうかな。でも私が描くモノは周辺の人間には評判良くないんだよなぁ・・・・・・。

サイトリスト